「もう居なくなりたいなんて思ってないですか?」
伊吹さんの優しくも切ない声が耳元に響く。
わたしは、「もう思ってないですよ。」と答えた。
伊吹さんはわたしの言葉に「良かった。」と言うと、わたしから離れ、「あ、すいません、、、つい、、、。」とわたしを突然抱き締めたことを謝った。
「しずくさんの後ろ姿を見てたら、つい抱き締めたくなってしまって、、、。」
伊吹さんはそう言うと、自分の定位置に戻り、やっちまった、、、という反省をしたような表情で後頭部の髪の毛をワシワシと搔いていた。
わたしはドキッとして照れる気持ちはあったが、伊吹さんに包まれて嫌な気はせず、むしろ嬉しかった。
「さぁ、珈琲淹れましたよ。」
わたしはそう言うと、伊吹さんのマグカップはテーブル代わりの丸椅子に置き、「置いときますね。」と言い、自分の分を持っていつもの伊吹さんの斜め後ろの椅子に座った。
淹れたての熱い珈琲を慎重に飲み、喉から身体に染み渡っていうのを感じる。
伊吹さんはまだ反省している様子で複雑な表情を浮かべていたので、わたしはそんな伊吹さんを見て愛おしくなってきてしまった。
「気にしないでください。伊吹さんの腕の中、温かかったですよ。」
わたしがそう言うと、伊吹さんは驚いた表情でこちらを向き、「嫌じゃなかったですか?」と不安気に訊いてきた。
「嫌じゃなかったです。」
わたしがそう答えると、伊吹さんは安堵の表情に変わり、「良かったぁ、、、しずくさんに嫌われたら、どうしようかと思いました。」と胸を撫で下ろしていたのだった。



