「あ、そういえば、、、。」
わたしがそう言うと、伊吹さんは冷めた珈琲を飲みながら「ん?」という表情をした。
「さっき峯岸さんが怒ってましたけど、、、わたし、アトリエに出入りしちゃっていいんでしょうか。」
わたしの言葉に伊吹さんは、「あぁ。」と言うと、マグカップを丸椅子に置いた。
「気にしないでください。峯岸さんにそんなこと決められる筋合いないですから。」
「わたし、峯岸さんに凄く嫌われちゃってますよね、、、。」
わたしは苦笑いをすると、両手でマグカップを包み込みながら、珈琲に口をつけた。
「何なんですかね。いつも態度が悪くて申し訳ないです、、、。」
「いえ。峯岸さん、伊吹さんのことが好きなんだと思いますよ。きっと、独占欲が強いんでしょうね。」
「ん〜、、、ビジネスパートナーなのに、個人的な感情を持ち込まれると、仕事がやりづらいんですけどね。」
伊吹さんはそう言い、困ったような表情を浮かべ、人差し指でこめかみ辺りを搔いた。
「峯岸さんが伊吹さんを見る時の表情が女の顔してますからね。」
「女の顔?」
「そうですよ?やっぱり好きな人を見る時の表情は、普段と違いますからね。」
「じゃあ、しずくさんも好きな人を見る時は、女の顔になるんですか?」
伊吹さんはわたしをからかうようにそう言い、悪戯に笑った。
恥ずかしくなったわたしは、「どうですかね?」と誤魔化し、マグカップで顔を隠すように珈琲を飲んだ。



