わたしは驚きながら、新居に足を踏み入れた。
ワンルームだけど広い。
それにバスとトイレは別。
これで家賃2万は安すぎる、、、。
「あのぉ、ここって、家具付だったんですか?」
わたしが伊吹さんにそう訊くと、伊吹さんは「いや、和総が揃えたんだと思うよ。」と言った。
「えっ?!わざわざ揃えてくださったんですか?!このソファーもベッドもテーブルとかも?!テレビに調理家電まで?!」
「あいつ、困ってる人がいるとほっとけないタイプなんですよ。見た目もイケメンなんですけど、中身もイケメンなんですよねぇ〜。ズルいよなぁ。」
「こんなに良くしていただいて、何か申し訳ないというか、、、。」
「大丈夫ですよ!俺が勝手に話し進めちゃったところあるんで、、、逆に突然で申し訳ないです。」
「とんでもないです!あの家からやっと出られて、、、伊吹さんには感謝しかないです。本当にありがとうございます。」
わたしがそう言い、頭を下げると、伊吹さんは「いえいえ!喜んでいただけてるなら、俺も嬉しいです!」と言い、それから「じゃあ、俺はこれで失礼しますね。しずくさんは片付けとかもあるでしょうし、俺もこれから取材入ってるんですよ。」と言った。
すると、伊吹さんのスマホが鳴った。
伊吹さんはスマホをわたしに見せ、指をさすと、「ほら、来た。峯岸さんから電話。」と渋い顔をして言い、電話に出ると「はーい、分かってまーす。」とだけ言って電話を切った。
「さて、行かないと。」
「頑張ってくださいね。」
「ありがとうございます。あ、その前に。」
伊吹さんはそう言うと、ズボンのポケットから何かを取り出し、わたしに差し出した。
わたしが手を出すと、伊吹さんはわたしの手のひらに1つの鍵を落とした。
「俺のアトリエの鍵です。良かったら、どうぞ!」
「えっ?」
「それじゃあ、取材行ってきます!」
伊吹さんはそう言うと、ふと手を上げて、仕事へ行ってしまった。
わたしは自分の手のひらに落とされた鍵を見つめると、「アトリエの鍵、、、。」と呟き、何でわたしに鍵を?と考えながら、しばらくの間、立ち尽くしていた。



