スノードロップ


ひらひらと手を振られて追い払われる。




「…はい。投票用紙、ありがとうございました」




先生に小さく頭を下げてその場から離れる。

そのまま女子生徒に群がられている男子生徒達を視界を入れること無く、出口付近の投票箱に投票用紙を入れる。

それから邪魔にならない位置へと移動して壁に寄り掛かる。


聴こえてくるのは、女子生徒の黄色い色めき立った歓声と先生達の声。

私はざわめく熱気を肌に感じながら目を閉じた。






生徒会役員選挙は無事終わり。

生徒達が帰路に着く中、私は理紗に校舎内を連れ回されていた。

どの学校も造りはそこまで変わらないんだから、何も入学式当日に探検しなくてもいいと思うの。

この子はいったい何が面白くてこんな事をしているのかしら。

丸一日学校に居たから私は疲れたわ。




「……帰りましょう」




歩くの疲れたわ……。




「……ん〜?そうだねぇ」





くるりと振り返った理紗がにっと笑う。

その言葉にホッとする。


人気のなくなった廊下は静か。


かれこれ丸一日学校に拘束されていたから、やっと帰れるというのに。


柄の悪い男子生徒が数人こちらへ向かって歩いて来るのが視界に入る。

何も無ければ良いなと思っていると。

男達と私達に気がついたららしく、足取り軽く駆け寄って来る。




「ねぇねぇ、何やってんの?」




「学校見学ー?俺達が案内してやるよ」




全くやっと帰れるというのに邪魔しないでもらいたい。




「結構です。もう帰りますから」




「遠慮なんてしなくていいから〜」




遠慮ではなく普通に迷惑です。