投票用紙を差し出してきたのは、今日の入学式で担任と紹介された真島先生。
シャツにスラックスというシンプルな格好の30代くらいの男性。
……教室に居ないと思ったら、こんなところに居たのね。
会ったばかりの担任に名前を覚えられるようなことは、していないと思うけど……。
……まだ目立つような事はして無いよ?
「はぁ〜♡マジイケメン♪」
るんるんとスキップでも始めそうな軽い足取りで、女子生徒の群れの中へと消えて行く理紗。
そんな理紗を手を振りながら見守送っていると、真島先生が私を見つめていることに気がついて、視線を向ける。
「……なんですか?」
「北見は見に行かないのか?」
「人多いじゃないですか。…私は先生が私達のことを認識している事に驚きました」
一目見ただけで顔と名前が一致させることが出来るなんて凄いことよ。
先生にはクラス名簿があるだろうけど、それでも凄いことだと思う。
「……へぇ?男目当てで入学して来る女子生徒達が多いからな。北見もその類いなのかと」
仮にも教師が呆れきった表情で溜息つかない方がいいわよ。
というか、変な勘違いされてるんだけど……。
心外だわ。
「馬鹿なんですね、その方々」
私の言葉に先生はケラケラと笑う。
表立って私の意見に同意はしないけれど、ほぼ同じ意見ということかしら。
高校を選ぶ基準が男の顔面なんてどうかしているわ。
もっと見るべきところや大事なことがあるでしょうに。
「…ほら、北見も投票して来い」
