スノードロップ


「……帰りたい」



「我慢しようかぁ?一応、メインイベントなんだけどねぇ」




私の呟きを拾った親友の理紗(りさ)が苦笑する。


黒髪ストレートの艶のある髪の毛は肩の上で切り揃えられ、ひんやりとした涼やかな顔立ちのクール系女子。

中学生の時からの悪友であり、高校でも奇跡的に同じクラスになれた。




「生徒会役員選挙なんて、興味が無いわ」




「え〜?楽しも〜よ♪この学校イケメン率高いんだよ!」




楽しそうに笑う理紗には申し訳無いけど、男子生徒がイケメンだろうが、そうで無かろうが、興味は無い。

眼の前にいる理紗にしたって、生徒会役員選挙に興味があるわけでは無い。

単純に面白そうだから、遊び感覚で楽しんでいるだけのこと。




「………面倒臭い」




ブツブツと文句を言ったところで帰れるわけでは無いけれど。


暫くして、生徒会役員選挙の準備が出来たと校内アナウンスがあり、ぞろぞろと教室を出て体育館へと向かう。

午前中には居なかった生徒達がぞろぞろと体育館へと入って行くのが見える。

おそらくは2,3年生達だろう。


……帰りたい…。

人多い……。

人に酔いそう………。


バックレたい。

……切実に。



ま、理紗に腕を引っ張られている私には、逃亡する事は不可能なのだけど。

元気良く歩いて体育館に足を踏み入れる理紗と。

出来ることなら今すぐにでも踵を返して引き返したい私。

気がついた時には投票用紙を手渡している、先生達の前まで連れて来られていた。




「お!お前らか。この紙に番号を書いてら出口の箱に入れて、投票は終わりだ」