スノードロップ


こんな約束を取り付けているのだから笑ってしまう。




「ん〜、そういや名乗って無かったなぁ」




ええ、知りません。

本当なら名前に興味は無いのですが。

仕方が無いでしょう。




「俺は綾崎琉生(あやさきるい)。高2。よろしくなぁ、お嬢さん?」




ゆるゆるとした雰囲気で、口に咥えていた煙草を携帯用の灰皿に捨てて。

高校生とは思えない色気と艶気を振り撒いて。

するりと私の右手を掬い上げてキスを落とした。


……最初に声を掛けてきたのもこの人だったな。




「次は僕ね!!」




私と綾崎先輩に割り込むように、可愛らしい女の子みたいな男子生徒が言う。




「僕は天里結(あまさとゆい)れ同じクラスだよ〜♪よろしくね!!」




にこにこにこにこ。

満面の笑みを浮かべて私の右手を握って、上下にブンブンと振り回す。

握手と言うには元気過ぎる、ソレ。


ハニーピンクのふわふわの髪の毛とクリクリの大きな瞳。

女の子と言われても頷けるほど、可愛らしい美少年。

…なのだけど……。




「……理紗、こんな子クラスに居たっけ?」




見た覚えが無い。

こんなにも目立つのに。


こてりと首を傾げれば、理紗が溜息をついて頭を抱えた。


……変なこと言ったかしら?




「…ちゃんと居たよ?……礼奈、席隣だったでしょ?」




なんと!?

それは……気が付かなかったわ……。

この学校、髪色自由で高確率で髪の毛染めている生徒が居るから、教室内がカラフルで気が付かなかったわ。

……目が疲れるのよね、カラフルで。




「…あら?……ごめんなさい」




悲しそうにふるふると小刻みに震えている、天里君に一応謝っておく。