「……何か?」
「投票用紙に何も書かなかっただろ?」
……え?…うん。
それだけ?
呼び止めてまで聞きたかったことって、そんなくだらないことなの?
「…書きませんでしたけど」
何か問題でも?
絶対に投票しなきゃいけない、なんていうルールは無かったはずよ。
それに女子生徒は大勢居たでしょう。
私一人が何も書かなくても問題無いと思うわ。
「…はぁ!?そんな事したの!?馬鹿なの?書かないなら私に用紙頂戴よ!!!そしたら、受けバージョンのランキングも付けれたのに!!」
私の言葉に過剰に反応したのは、理紗。
そう、この子は見た目はクール系、中身は自他共に認める重度のオタク。
喋るとイメージが崩れる変わった子。
少し残念な美少女なのだ。
……あー………うん。
「……ごめんね?」
そんな事思い付きもしなかったの。
来年からはそうしようかな。
理紗が煩いからね。
投票自体は私がしても理紗がしても大して変わらないだろうし。
「……なぁ、お前、俺の女になれ」
………。
……………。
…………………。
…………………………ん?
…………幻聴?
…え?
………思考がショートしかけたわ。
危ない、危ない。
ちらりと理紗とその他4人を見ると、ポカンと間抜けな表情を晒していた。
黒髪さんといえば、澄ました顔で私の返事を待っている。
……取り敢えず、私の耳が正常に機能していたとして、この人の頭の中が、いったいどういう構造なのか興味があるわ。
……頭イカれてるのかしら?
そもそも会って数分の相手に「俺の女になれ」は、イカれているわよ。
