「お前、なんでこんなとこ居んだよ」
「父から連絡はいってるでしょう。会社が潰れたからあそこに居られなくなったの」
「そうじゃなくて、なんでホステスなんだよ」
「京弥くんなら分かるでしょう。大きな会社ほど、一度失敗したらどれほどのものを背負うのか」


そう言うと、京弥は何も言わなくなった。

星來達が抱えた借金は普通に昼の仕事をしながら到底返していける額ではない。

両親が歳を取ってなかなか思うように働けない中、誰が家計を支えていかねばならないのか。

大した学歴の無い星來が大金を稼ぐには、これしか方法は無かったのだ。



同じく会社を経営し、多くの社員を導く立場にある京弥ならその恐ろしさは容易に想像がつくはずだ。


今は実家のグループ会社の一つを任されている京弥だが、野心の強い彼はいずれはそれらを統括する兄達と肩を並べる為に猛進している。

そんな相変わらずな所は今も尊敬するし応援もしている。
だがそれなら今此処に彼がいる状況が既におかしい。


星來の知る京弥ならば、例え恩人の紹介だろうと気に入らなければ二度と行かないし、そもそも彼の目指す所に一ミリの関係の無いこんな場所には来ない。