そこまで一気に言い、一切の感情を失っていた京弥の顔に生気が戻ってくる。
「お前の考えそうな不安の芽は全部取ってある。他に文句があんなら言ってみろやコラ」
ここで星來が月を取ってこいと言えば、本当に取ってきそうな物言いだった。まるでかぐや姫にでもなった気分だ。
ーーけどそんな事、急に言われたって…
星來にとって一番の気がかりは京弥の気持ちだった。
例え京弥の行動全てが星來の為だとして、どうしてそこまで自分に尽くすのか理解ができない。
昔あれだけ時間を共にして好意を伝えても京弥の心どころか興味の欠片も貰えなかったのに、再会してたった一年くらいでこんなに求めてもらえるなんてそんな都合の良いこと、夢としか思えない。
いっそ全部冗談で、思い上がるなと罵られた方がまだ幾分か現実味が増す。
京弥の考えている事が本当に分からない。
「…どうして私なんかの為にそこまでするの?だって京弥くんは…私の事あんなに嫌ってたじゃない…」
なのに今更そんな事言われたって、混乱するに決まってる。



