そのままそこで途方に暮れていると、一本の電話が入った。
画面を確認すれば、それは地方へ出稼ぎに出ている父からだった。
「お父さん!私今銀行に来ててお金が…!」
『星來、何も聞かずに今から言う場所にすぐ来て欲しい。今すぐだ』
電話越しの父の声はどこか緊張で引き攣っており、只事ではないと嫌な予感を感じてタクシーへ飛び乗った。
そして指定の場所を運転手に伝え、バクバクと心臓が嫌な音を立て恐怖で震える体を抱き締めながらそこへ向かうと、政界の大物も利用すると言う豪奢な日本家屋の料亭だった。
入り口で名前を伝えると「お待ちしておりました」と不審に思われることなくそのまま部屋に通されーーそこには懐かしい顔ぶれがあった。



