すべてを捨てて、君を迎えに行く








星來はほぼ毎日、入院する母の元へお見舞いにいっている。

長年の無理が祟った母は痩せ細り、少女のようにあどけなかった面影は見る影もなく、星來の顔を見るたびにごめんね、ごめんねと何度も涙を流すのだが、その日は違った。


顔色が悪いのは変わらないが、穏やかな笑顔を見せていた。


何かあったのかと聞けば、「懐かしい友人に会ったの」と嬉しそうに話してくれた。

家が没落してからは過去の繋がりは一切切れているはずなのにと不審に思い、誰かと聞いても母ははぐらかすばかりで答えてはくれなかった。




「…あのね、お母さん」
「ん?なあに星來ちゃん」
「……ううん、やっぱり何でもない」


それから少し取り止めのない会話をし、星來は病室を後にした。