すべてを捨てて、君を迎えに行く




それからあっという間に一年が経った。

ホステスも何人か入れ替わって少し店の雰囲気も変わり、ママや女の子達の星來の様子を伺う様な視線も一切無くなった頃、星來の人生は変わろうとしていた。





「聖羅ちゃん、結婚を前提に付き合って欲しい」


この業界では愛の告白などさほど珍しい事ではないが、今に至っては別である。


今日同伴して会っているのは、若い頃に最愛の妻を亡くし今も一途に想っている客だったから。



「…どう、なさったんです?早見さんがそんな事仰るなんて」


奥様の事愛していらっしゃったでしょう、という言葉があまりの驚きで出てこなかった。
現に今も、愛の言葉を囁いておきながらその目に沸るような熱は感じない。


「僕は本気だよ」
「…えっと、いきなり言われても…」
「君の力になりたいんだ」


そう言って握られた手は少し皺でごわついていた。


「僕なら君が抱えている借金も助けてあげられる。全部は無理でも、その時は今のまま働いても構わないし、昼の仕事に就いたっていい。辛い思いをしてきた君を、幸せにしてあげたいんだ」


早見の目には一切の曇りがなく、本気であることが伺えた。