すべてを捨てて、君を迎えに行く




「よっぽど悔しかったんだな〜あの女!熱愛でっちあげて自滅してんのザマァ!」


どうやらスポンサーがあまりに推すので仕方なく起用したが、あまり性格の評判の良くない女性らしく熊野はガハハと大声を上げながら笑っていた。


「皇社長、よくやった!って心ン中でガッツポーズしたわ!あの女も報道の後相当やり込められたらしいし、社長よっぽどキレてたんだな〜」
「そ、そうなんですね〜」
「ありゃあよっぽど婚約者様とやらに惚れてるな!」



ヘルプについた女の子達のチラチラとこちらを伺う様な視線を受けながら、星來は何でもない事の様に新しい酒を作るためにテーブルへ手を伸ばした。


大声を上げて笑っていた熊野は、突然ピタリと笑うのをやめて「そういえば」と次の瞬間に爆弾を投下した。



「その皇社長もこの店来てるって小耳に挟んだけど、マジ?」


熊野の何気ない質問に彼と星來以外のその場の人間がビシッと音が出そうな勢いで固まった。

星來は優雅な手つきで熊野の追加のお酒を作っていた手を止め、なんとも麗しい笑顔を見せて言った。


「お付き合いで一度来られましたが、それだけですよ」





星來の中ではもう、京弥の話は終わった事なのである。