すべてを捨てて、君を迎えに行く




「もう、ここには来ないで」


口をついて出たのはホステスとしての九軒聖羅のものではなく、ただの綾川星來の言葉だった。


「…は、なんで、」
「ずっと、迷惑だったの」


目を合わせたら泣いてしまいそうで、星來は顔を逸らしたまま続ける。


「知ってた?君が他のホステスをあまりに拒絶するから、連携取りづらくなって店の士気が下がってるの」


嘘だ。

ママも他の女の子も、甘酸っぱいわあなんて生温い視線を向けてきただけだ。



「…それは、」
「前にも言ったよね?君とは住む世界が違うって、関わらないでって」
「……」
「知ってたよ。君が昔の事を悔やんで会いにきてくれてたの」


これは本当。

時折、京弥は星來に懺悔するような顔を見せる。

それはほんの一瞬で、星來でなければ見落としてしまいそうな小さな変化だった。



「だから、もう十分だから。贖罪の為ならもう必要ないから」




ーーこれ以上、私を苦しませないで。