彼女は聖母のような笑顔の裏で他人を拒絶している。
それに星來をそうさせた一端には京弥も少なからず関わっている。
あの日、全てを失って地獄を味わったあの日、せめて京弥が別れの言葉を言わせてくれていたらーー何か変わっていたかもしれないのに。
そう思い、星來は京弥をちらりと見た。
昔見下していた女に此処まで言われたら逆上するかして一切関わってこなくなるだろうと踏んでの物言いだった。
きっと次に出てくる言葉は星來を貶す言葉、そう確信していた。
「なんで俺がお前の頼みなんざ聞かなきゃなんねえんだ」
しかし京弥は、どこまでも予想を超える男だった。
「…え?」
「お前が俺をどう思おうがやる事は変わんねえよ。俺のやりたいようにやるだけだ」
「…いや話聞いてた?君は財閥の御曹司、私はホステス、立場が違い過ぎるんだって」
「知るか。相手がホステスだろうが大統領だろうが、俺に命令できんのは俺だけなんだわ。寝言は寝て死ね」
なんて事だ。
暴言のスキルとはレベルアップするらしい。
「…ふっ、あはは!」
なんだかここまで振り切れられるといっそおかしくなって笑いが止まらなくなる。



