「…体売ったんか」
予想通りの言葉が返ってきて思わず笑みが漏れた。
そういう風に聞こえるように言ったのは自分だ。
あの京弥が、自分を罵りまくっていた皇京弥が自分の手のひらの上で転がるのを見るのは酷く心地が良かった。
「まさか。誓って私は清い身だよ。アフターは一切無しって筋だけは通してきたもん」
お陰でなかなかお客さん定着しなくて苦労したけどねとついでに言った。
「だってそんな事したら、お母さん死んじゃうでしょ?」
今星來の母は長年の苦労が祟り過労で倒れて入院中だ。
父は必死に金になる仕事を見つけあちこちを転々としている。
家族の中で今一番収入が安定しているのが自分なので通いやすい場所に入院させているが、今の母の姿を京弥は見れたものではないだろう。
「別に軽蔑してくれて構わないよ。そういう風に見られがちな職業だって理解してるし、誇りとか別に無いし。ただお金の為にやってるだけだもん」
肩を竦めて言い、「ただね」と続ける。
「正直、もうこういうのはやめて欲しいんだ。私達、とっくの昔に赤の他人でしょ」
九軒聖羅は決して本心を見せないと誰かが言った。
だからこそ、その本音の見えないミステリアスさに魅了され堕ちる男が後を絶たないのだが。



