「あ、あの…、今日ここでアイドルプロジェクトの集まりがあると聞いてきたんですけど…」


おぼつかない敬語で失礼のないよう、細心の注意を払って聞いた。


「お名前を聞いてもよろしいですか?」


「奥村飛花と」
「秋庭千紗です」


「はい、確認しました。左手にあるエレベーターから最上階までお上がりください」


「はい」


チンッと音がしてエレベーターが来る。
中にはだれも乗っていなくて、乗り込んですぐ、はぁぁと大きなため息が出そうになった。

なんだか、妙に緊張してしまって疲れ方が異常だ。


「飛花すごいね、あんな堂々とできて」

千紗が尊敬の眼差しを向けてくれるけど、すごくもなんともないよ。

「千紗がそばにいてくれたからだよ」

きっと、千紗がいなかったらオドオドして何もできなかった。そばにいてくれるだけでいいの。それだけで力になるから。



チンッとまた音がするとエレベーターのドアが開いた。

最上階に着いたようだ。


出てみるとあたりはシン…と静まり返っていて、わたしたちの緊張をよけいにあおる。


出てすぐ目の前にあった看板には矢印が書いてあり、下には『アイドルプロジェクト参加者はこちらへ』とご丁寧に案内が書いてあった。


2人で矢印に沿って進む。


しばらく進むと矢印はひとつの部屋を指差した。
この部屋だけ明かりがともっている。
中からは何の音もしない。
防音にでもなっているのかな?


千紗と目を合わせる。
コクンとうなずく千紗を確認したら、大きく深呼吸して思い切ってドアノブを引いた。