2年前、離婚したはずの夫から、花束と手紙が届きました

「本当にファルク様にはすべてお世話になってしまいましたね……」
「いや、あなたのためなら……それに私の心も決まった」


 私はずるずるとファルク様の邸宅でお世話になってしまっていた。

 日常がまた、落ち着いた頃、ファルク様が神妙な顔をして、私に尋ねてきた。

「ピア嬢の好きな花はなんだろうか?」
「え?」
「あなたに花束を贈りたいんだ」

 いとしげに見つめられ、びっくりした。
 一瞬だけ、ロジェリオの花束が脳裏をよぎったけど、ファルク様からなら、もらいたいと思った。
 それに、私の好みを聞いてくれるのが、嬉しい。

「真っ白なピオニーが好きです。今の時期は、見ごろですし」
「そうか……わかった」

 次の日、目覚めた私のベッドの上に真っ白なピオニーの花束があった。手紙も添えられている。ドキドキしながら中身を見ると。


 ピア嬢へ

 私と結婚してください。

 ファルク・コルネール・リヒテンベルク


 プロポーズの言葉があった。
 私は手紙と花束を握りしめ、ベッドからおりて、駆け出す。

 結婚生活にいい思い出はない。
 だけど、ファルク様となら。
 幸せすぎて笑ってしまう予感がした――

 階段をかけおりて、ダイニングルームに入ると、ファルク様の姿が見えた。
 彼と目が合った瞬間、ほんの少し、涙がでそうになった。
 でも、私は口角をあげた。

「ファルク様!」

 私は手紙と花束を彼に見せて、満面の笑みで答えた。

「はい、喜んで!」

 ファルク様の目が丸くなり、優しく細く、さがっていく。

 そして、次の瞬間。ファルク様が、大きな体で私を抱きしめた。


 ―― Happy Wedding ❀