ファルク様がロジェリオを射抜くように見る。
「な、なんだよっ」
「俺はファルク・コルネール・リヒテンベルク。この土地の領主だ。領主として、貴殿の婚姻について、決闘裁判を命じる。剣を持ち、戦え」
「は、はあ? 意味がわからないよ」
「領主は裁判官の役目を負うんだ。領民のもめごとは、俺が沙汰をくだす」
ファルク様が帯刀していた鞘をロジェリオの足元に投げた。
そして、自身も剣を抜き、構えた。
「剣を拾え、ロジェリオ・ローリング。生き残った方が、正義だ」
「そ、そんなっ……むちゃくちゃなっ!」
ファルク様の怒号が辺りに響いた。
「ここでは、俺が法だ!」
「ひっ、ひいぃぃっ!」
ファルク様の剣におそれおののき、ロジェリオが鞘を手に持つ。剣を抜くこともままならず、ロジェリオは鞘でファルク様の剣を受け止めようとした。でも、ファルク様に敵うはずない。ファルク様は戦の英雄なのだから。
「い、いだだだっ……!」
手の甲を斬られ、ロジェリオが痛みにのたうち回る。
「体の一部を失くすのは、こんな痛みではおさまらないぞ!」
「ひっ……た、たすけて!」
「二度とピア嬢に近づくな! 次に、彼女の前に現れたら、おまえの心臓を貫く」
「ひいいいいっ!」
転がるように走り出したロジェリオ。走る先に待ち構えていたのは、騎士団の方々で。
「いたぞ、不審者だ!」
「あいつかー!」
「ピアさんを怖がらせてんじゃねえよ! おとといきやがれーッ!」
「うわああああああっ!」
ロジェリオは物理的にボッコボコにされ、失神したところ、領地外にポイっと捨てられた。命までとると後味が悪いから、これでよかった。
後で聞いたのだけど、家令が騎士団に通報してくれたそうだ。感謝したい。
ロジェリオは私に母の介護をさせるため、連れ戻したかったようだ。弟夫婦を金で脅して、私の居場所を聞き出し、商人を買収して、私宛てに手紙を出した。
この件で、不審者が外から侵入してこないように、町全体を城壁で囲う計画が上がっている。人も多くなった。食料もいきわたりつつある。この土地は、ファルク様自身のように、強く、あたたかいものになるだろう。
「ごめんよおおおおっ ねえちゃああああんっ」
弟に会うと、鼻水をたらして泣きながら土下座された。3人だった子どもは、5人になっていて、末っ子は生まれたばかり。領地の切り盛りができず、お金も底をつきかけ、ロジェリオが出す金につられてしまったそうだ。
がっくりきてしまうが、それでも私は弟が可愛い。生まれた甥っ子たちも。
その気持ちを汲んでくれて、ファルク様が弟に家族と一緒に、この土地で暮らすように勧めてくれた。
赤字になっていた私の領地は王家に返した。とはいえ、領主が決まるまで時間はかかる。希望者には、ファルク様の土地で住めるように、手続きしてもらえた。
弟は領主ではなくなり、騎士団に入ることになった。騎士団のみなさまに、毎日、ボッコボコにされながら、いちから鍛えられている。弟の家族は、救貧院に入った。弟が騎士団員として一人前になれば、家族みんなで暮らせるようになるだろう。
「な、なんだよっ」
「俺はファルク・コルネール・リヒテンベルク。この土地の領主だ。領主として、貴殿の婚姻について、決闘裁判を命じる。剣を持ち、戦え」
「は、はあ? 意味がわからないよ」
「領主は裁判官の役目を負うんだ。領民のもめごとは、俺が沙汰をくだす」
ファルク様が帯刀していた鞘をロジェリオの足元に投げた。
そして、自身も剣を抜き、構えた。
「剣を拾え、ロジェリオ・ローリング。生き残った方が、正義だ」
「そ、そんなっ……むちゃくちゃなっ!」
ファルク様の怒号が辺りに響いた。
「ここでは、俺が法だ!」
「ひっ、ひいぃぃっ!」
ファルク様の剣におそれおののき、ロジェリオが鞘を手に持つ。剣を抜くこともままならず、ロジェリオは鞘でファルク様の剣を受け止めようとした。でも、ファルク様に敵うはずない。ファルク様は戦の英雄なのだから。
「い、いだだだっ……!」
手の甲を斬られ、ロジェリオが痛みにのたうち回る。
「体の一部を失くすのは、こんな痛みではおさまらないぞ!」
「ひっ……た、たすけて!」
「二度とピア嬢に近づくな! 次に、彼女の前に現れたら、おまえの心臓を貫く」
「ひいいいいっ!」
転がるように走り出したロジェリオ。走る先に待ち構えていたのは、騎士団の方々で。
「いたぞ、不審者だ!」
「あいつかー!」
「ピアさんを怖がらせてんじゃねえよ! おとといきやがれーッ!」
「うわああああああっ!」
ロジェリオは物理的にボッコボコにされ、失神したところ、領地外にポイっと捨てられた。命までとると後味が悪いから、これでよかった。
後で聞いたのだけど、家令が騎士団に通報してくれたそうだ。感謝したい。
ロジェリオは私に母の介護をさせるため、連れ戻したかったようだ。弟夫婦を金で脅して、私の居場所を聞き出し、商人を買収して、私宛てに手紙を出した。
この件で、不審者が外から侵入してこないように、町全体を城壁で囲う計画が上がっている。人も多くなった。食料もいきわたりつつある。この土地は、ファルク様自身のように、強く、あたたかいものになるだろう。
「ごめんよおおおおっ ねえちゃああああんっ」
弟に会うと、鼻水をたらして泣きながら土下座された。3人だった子どもは、5人になっていて、末っ子は生まれたばかり。領地の切り盛りができず、お金も底をつきかけ、ロジェリオが出す金につられてしまったそうだ。
がっくりきてしまうが、それでも私は弟が可愛い。生まれた甥っ子たちも。
その気持ちを汲んでくれて、ファルク様が弟に家族と一緒に、この土地で暮らすように勧めてくれた。
赤字になっていた私の領地は王家に返した。とはいえ、領主が決まるまで時間はかかる。希望者には、ファルク様の土地で住めるように、手続きしてもらえた。
弟は領主ではなくなり、騎士団に入ることになった。騎士団のみなさまに、毎日、ボッコボコにされながら、いちから鍛えられている。弟の家族は、救貧院に入った。弟が騎士団員として一人前になれば、家族みんなで暮らせるようになるだろう。

