2年前、離婚したはずの夫から、花束と手紙が届きました

「……すみません。ファルク様」
「なにをだい?」

 鋭いまなじりが、やさしくなっていた。

「私があなたを守りたいんだ。守らせてくれ」

 嬉しくて、私は何度も、こくこく頷いた。

 ファルク様は本当にそばに居てくださった。スープの配給時間のときも、ファルク様が警戒してくれて、無事におわった。

 旅のときと同じように、近づきすぎず、離れすぎず、そばで私の行動を見守ってくれる。

 ところが、騎士団員が修道院に来て、帰ってくるように、慌ててファルク様に言っていた。だけど、ファルク様は断っていた。

「ピア嬢の周りに不審者がいる。私が彼女を護衛するから、巡礼の準備はきみたちがしてくれるか」
「不審者……え? ピアさん、大丈夫っすかっ!」
「え、ええ……ファルク様がいてくれますし……」
「団長! ふとどきものの特徴を教えてくださいっ! 見つけ次第、俺らもボッコボコにしますっ!」

 フンと鼻を鳴らす騎士団員に、私は目を丸くする。
 ファルク様はニヤリと口の端をあげた。

「ああ、ボッコボコにしてやれ。ピア嬢」
「……はい?」
「うちの騎士団は血の気が多いから、安心しなさい」

 おおらかに笑ったファルク様を見て、ほっとした。

 団員は「手紙を配達してくれたリチャードに詳しい話を聞いてくる!」と言って、出て行ってしまった。

 リチャードはロジェリオらしい人の姿は見ていなかった。手紙は領地に出入りする商人から渡されたものだった。

「不審者を捕まえるまで安心できないな。ピア嬢、私の館で寝泊まりしないか」
「えっ……でも」
「朝は、修道院へ送る。私が安心したいんだ」

 ファルク様がぼそっと呟く。

「違う形で、あなたを家に誘いたかったんだがな……」

 言葉が耳に届いて、ぎゅっと心臓が痛くなる。
 ――誘われたかったです。
 と、口から出そうになった。

 ファルク様の家は領主邸らしく、大きなもの。妻を迎えていらっしゃらないので、部屋は空いているそうだ。白髪の家令と、妙齢の侍女が満面の笑顔で私を労わるようにすすめてくれ、心地よく過ごさせてもらった。