私はもう帰ろうとバックをつかむ。
「待って!まだ、いかないで。どうしても、聞いて欲しいの。朝喜にも、菜花ちゃんにも後悔して欲しくないから。」
彼女の言葉なんて無視して帰りたかった。
でも彼女の訴える声があまりにも苦しそうで、一度上げた腰をまた下ろしてしまった。
ありがとう、彼女はそう言って話し出した。
「朝喜は小さい頃から体が弱かった。10歳のときに脳腫瘍が見つかったの。」
言われた瞬間、頭が真っ白になる。
「それから朝喜は朝が来るたびに嬉しそうだった。朝を喜ぶって書いて朝喜だしね。」
前に朝喜くんは、自分の名前が好きだと言っていた。ほんとうにうれしそうに。
「でも最近までは症状も少し落ち着いてた。菜花ちゃんが気づかないくらいにはね。」
