The previous night of the world revolution2〜A.D.〜

剣の稽古の際。

「あっ」

甲高い音を立てて、俺が右手に持っていた剣が宙を待った。

まさかその攻撃が当たると思っていなかったのか、相手をしていたアシベルは驚いて目を丸くしていた。

普段のルナニアなら、この程度の攻撃ではやられなかったはずだ。

俺はわざとらしくがっくりと項垂れ、落ちた剣を拾って、稽古場から離れた。

「おいおい、どうした?大丈夫かルナニア」

「うーん…」

俺の不甲斐ない戦いぶりを見て、エルスキーは心配そうに駆け寄ってきた。

「やっぱり何処か体調でも悪いのか?」

「何処も悪くないです…」

「なんだ。スランプか?」

「そんな感じのものです…」

本当は的外れなのだが、そういうことにしておく。

肩を落として溜め息を漏らしながら、俺は視界の端に、ハバナ・ユールシュルの姿を捉えた。

彼女はティモニーを相手に、試合に挑んでいた。

ハバナの実力を一言で言うなら、「それなり」といったところだろうか。

ミューリアのように優秀とは言えないが、でも平均よりは上。

やっぱり、「それなり」だ。

貴族のティモニー相手にも、引けを取っていない。

「あの子、美人なだけじゃなくて実力も結構あるんだよなぁ」

俺がハバナを見つめていることに気づいたのか、エルスキーがそう呟いた。

「ですねぇ…」

相槌を打ちながら、でも、俺は内心で舌打ちをしていた。

あの女、確かに実力はありそうだ。

ティモニーとのあの試合、ハバナが手を抜いているのは明らかだった。

エルスキーや、ランドエルスの腑抜けた教官達は気づいていないようだが。

元帝国騎士団四番隊隊長の身ともなれば、一目瞭然だった。

明らかに彼女は手加減をしている。自分の実力を隠している。

俺と同じように。

彼女は俺を見てはいないようだが、俺の先程の試合を見れば、俺が手を抜いていたことに、彼女もまた気づいていたかもしれない。

俺が見たところでは…彼女は、帝国騎士団の副隊長になれるくらいの実力はあると思っていた方が良い。

一対一であいつを殺せと言われれば難しくないが、でも…簡単でもないな。

不意をつけば、俺を殺すことも出来るかもしれない。

無論俺も、彼女を前に油断するつもりはないが…。

厄介なことだ。ハバナがミューリアのようなひよっこであったなら、軽くあしらえたものを。

そんなに簡単にはいかないな。

「…?」

難しい顔をしてハバナを見つめる俺に、エルスキーは怪訝そうに首を傾げていた。