「実は俺も、皆さんにチョコ用意してるんですよ」

と、言い出したルレイア。

「マジ?ルレ公はもらう専だと思ってたわ」

もらう専なのはお前だ、アリューシャ。

あと、バレンタインの存在を忘れてた俺もな。

「それぞれ違うんですよ。アイズには、これ。甘さ控えめだそうです」

「ありがとう。甘過ぎるの苦手だから、助かるよ」

「アリューシャには、ボリュームたっぷりのお徳用チョコ」

「わーい!なんか一杯もらった気がする!」

「シュノさんにはこれ。可愛いでしょう?」

「うん、素敵。ありがとうルレイア…!」

さすがルレイア。色々考えてるな。

甘いのが苦手なアイズには、甘さ控えめ、高級なビターチョコを。

子供舌で、質より量を重視するアリューシャには、色んな種類のチョコがたっぷり入った詰め合わせを。

可愛いもの好きのシュノには、花を模したカラフルで可愛いチョコレートを。

素晴らしいチョイスだ。

そして。

「で、本命のルルシーには、これです」

「…これは何?」

「なんと、俺の手作り。輸入物の強力媚薬をたっぷりブレンドした、特製チョコです!」

そんなことだろうと思って、先に聞いておいた俺、偉い。

「気持ちだけ受け取っておくよ」

「酷い!ルルシー、俺頑張って作ったんですよ?見てくださいよこの指。一杯火傷したんですよ?」

ルレイアは、わざとらしく絆創膏を貼った指を見せてきた。

それ、絶対フェイクだろ、お前。

昨日までそんなのしてなかったぞ。

「乙女が頑張って作ったチョコを受け取らないなんて、酷いですよ!」

「変なもん入れるからだろ」

あと、誰が乙女だって?女泣かせの癖に。

すると。

「そうよ、酷いわルルシー。乙女が頑張って大好きな人の為に作ったチョコを受け取らないなんて、そんなの駄目よ」

シュノまでがルレイアに加勢。

「いや…。シュノ、でも…」

「そうそう!シュノさんの言う通りですよ。受け取ってもらえないなんて悲しい。うえーん、シュノさん。ルルシーが酷いんです~」

ここぞとばかりに、シュノにくっついて泣き真似をする狡猾なルレイア。

明らかに嘘泣きなのに、シュノはそれを本気にしたらしく。

ルレイアが泣かされた!とばかりに、声を荒らげて俺を責めた。

「受け取ってあげなきゃ駄目よ、ルルシー!断るなんて酷いわ!」

「いや、あのなシュノ…」

「そうそう、ルレ公からの手作りチョコなんて、全ハーレム会員の夢だぞ!皆もらいたくてももらえないんだぞ!有り難く受け取ってやれ!」

「仕方ないねルルシー。惚れられた相手が悪かった」

アリューシャと、アイズまでもが加勢に加わる。

何この状況。何でこんなに俺に不利なの?

「…分かったよ…」

仕方なく、俺はルレイアの媚薬チョコを受け取った。

何で、俺がこんなものを。

「うふ。一緒に食べましょうね?ルルシー」

「…」

背中がぞわっ、とした。

ルレイアがいつにも増して覚醒するわ、何故か俺が悪者にされて責められるわ…。

本当、バレンタイン作った責任者、ここにつれてきてくれよ。

一時間くらい説教してやるから。