ーーーーーー…ルルシーさんの許可をもらって、俺は午後に帰宅した。

帰ったときフューニャが家の中でごそごそしていたら、また叱ってやらなければいけないと思っていたが。

「…フューニャ?」

「…ルヴィアさん。今日は随分と早いお帰りですね」

フューニャはちゃんと、寝室で休んでいた。

よろしい。

「具合はどうだ?少しは熱下がったか」

「もう大丈夫です…」

はいはい。フューニャは元気だろうと元気じゃなかろうと、大丈夫だとか平気だとか言うのだ。

本人の自己申告を信用してはならない。

フューニャの額に触れる。

体感的には…昨日よりは、少しはましになった、かな?

峠は越した…と言っても良いかもしれない。

「薬は飲んだか?」

「…飲みました」

「よしよし。良い子だ」

少し熱は下がったようだが、全快には程遠い。

まだしばらくは、フューニャをベッドに拘束しておかなければならないな。

「…ルヴィアさん、何で今日はこんなに早いんですか」

「うん…?上司に頼んで、早めに帰らせてもらったんだ。フューニャが心配だったからな」

「…そんな、子供でもあるまいに…」

「隙あらば勝手に動き回るから、子供よりタチが悪いよ。フューニャは」

事実を言っただけなのに、フューニャは不満げに眉をひそめた。

「悔しかったら、ちゃんと休んで早く治すんだな」

「…見てなさい。あなたが風邪を引いたとき、絶対やり返しますから」

「残念だったな。俺は馬鹿だから風邪は引かない」

ここ十数年、風邪は引いたことがないぞ。

このときどや顔で勝ち誇っていた俺だが、実はこの数週間後、完全に形勢が逆転することを…俺はまだ知らない。

「それで?フューニャ。昼は何か食べたのか?」

「…何も」

「馬鹿。お粥作ってるから食べろって言ったろ」

ほら見たことか。俺が目を離したらこれだ。

「だって…。お腹空いてないんです」

「しょうがないな…。ヨーグルトや果物なら?切ってやろうか」

「…」

欲しくない…みたいな顔をしているな。

だが、そうはいかない。

「りんごでもすりおろしてこよう。ちょっと待っててな」

「…はい」

俺は寝室を出て、キッチンに向かった。