The previous night of the world revolution2〜A.D.〜

翌日、俺は早速アイズレンシアさんの執務室を訪ねた。

普段、ルルシーさん以外の幹部と接する機会はないから…酷く緊張する。

しかもアイズさんと言えば、アシュトーリアさんに次ぐ『青薔薇連合会』のNo.2だ。

そんな偉い人に頼み事なんて…冷静に考えれば、随分無謀なことをしようとしている。

でも、それがフューニャの為なのなら。

俺は意を決して、アイズさんの執務室の扉をノックした。




「…あれ?君…確かルルシーのところの…」

「はい…。ルヴィア・クランチェスカです」

アイズさんはどうやら、俺のことを覚えているようだった。

あまり会ったことはないはずだが。

そして何故か、アイズさんの隣に、アリューシャさんがいた。

…何してるんだろう?ここで。

「ルルシーから何か?」

「いえ…俺の用事です」

「何か?」

幹部を顎で使うなど、即射殺されてもおかしくない。

だが放っておけば、フューニャが捕まるのだ。

それだけは、絶対に阻止しなければならなかった。

「…実は…脱国者の友人に、戸籍を作ってやって欲しいんです」

「…」

予想外の頼み事だったらしく、アイズさんは驚いていた。

…まぁ、こんなことを頼む奴はいないだろうな。

「脱国者ね…。別に良いけど、君、騙されてるんじゃないよね?」

「はい」

フューニャが俺を騙している。

第三者から見れば、有り得ない話ではないだろう。

『青薔薇連合会』の準幹部に取り入り、信用を得て、良からぬことをしようとしている可能性はゼロではない。

でも俺は、そんな可能性はゼロだと思っていた。

「もしそうだったとしたら…俺が責任を取ります」

「…そうは言うけどね。脱国者と関わるのはあまりお勧めしない。彼らの背負っているものは並大抵のものじゃないよ」

「…分かっています」

だからこそ、フューニャはうちを出ていこうとしたのだ。

そういったしがらみに、俺を巻き込む訳にはいかないから、と。

それでも俺は、そういうものを全部ひっくるめて…フューニャを守りたいのだ。

すると。

「良いじゃんアイ公。戸籍作ったげなよ。根なし草ってしんどいよ」

アリューシャさんが、足をぷらぷらさせながらアイズさんにそう言った。

「アリューシャ…でもね」

「逃げてきたんでしょ?箱庭帝国から。立派なもんじゃないか。逃げるってのは人間の権利だよ」

「…分かったよ」

アイズさんは、溜め息混じりに了承してくれた。

アリューシャさんがこの場にいたことに感謝だ。

「すぐ取り掛かる。一週間くらいもらうよ」

「ありがとうございます、アイズさん…!アリューシャさんも」

「気にすんな!この礼は、君の上司の手作りご飯で返してもらうから」

ルルシーさん…ごめんなさい。

「あぁ、それと…登録する名前はどうするの?箱庭帝国の名前をそのままつける訳にはいかないよ」

「あ…そう、ですね」

ルミリュクァット…なんて名字、ルティス帝国では有り得ないからな。

「本人に聞いてきます…。後日でも良いですか」

「分かった。でも出来るだけ早めにね」

「はい」

話がまとまり、俺は何度も頭を下げて、アイズさんの執務室を出た。

これでフューニャに、この国に自分の居場所を作ってやることが出来る。

そう思うと、ほっとした。