その晩。
俺が入浴後に自分の寝室に入ると。
…何故か、ベッドの上の毛布がこんもりと盛り上がっていた。
「…何やってんの?」
「…」
フューニャが、毛布からぽこんと顔を出した。
…亀みてぇ。
「夜這いしようかと思いまして」
「すんなよ…」
しなくて良いって言っただろうに。
するとフューニャは、不満げに毛布から這い出た。
「私はあなたに施しを受けるばかりで、ちっともあなたにお返しが出来ていないので」
「しなくて良いよ。それに…充分返してもらってる。家のこと世話してくれてるし…」
「…それだけじゃ全然足りません」
「…」
だからって…夜這いは勘弁して欲しいのだが。
「あなたは優しいから、私の面倒を見てくれます。でも私は…それがとても申し訳ないのです。あなたの善意のみによって、私は生かされている…」
「…」
「これ以上ここにいたら、私はあなたに甘え続けてしまうでしょう。あなたに迷惑をかけ続けてしまう…。それは、嫌なんです」
フューニャは、これまでずっと言いたくて、言えなかったことを…初めて、口に出した。
…迷惑、か。
「もう充分、あなたには良くしてもらいました。これ以上あなたに甘えるのはいたたまれません。私を抱いてください。さもなければ、私をここから追い出してください」
「…」
好きでもない女は、抱けない。
だとすると、俺は彼女を追い出さなければならないが。
…でも、それも出来そうになかった。
「…お前を追い出すことは出来ない。追い出したら…お前はまた、身体を売ったり、金にならない占いをしたりして稼がないといけないんだろう?」
「…そうなりますね」
「そんな日々に戻りたいか?」
「…戻りたいはずがありません。でも…これ以上あなたの善意に甘える訳には」
俺はベッドサイドに腰を掛けた。
フューニャに何て言おうかと、考えていたのだ。
彼女が出ていく、と言うならそれを止めることは出来ない。
止める必要もないはずだ。元々彼女は居候なのだから、出ていくなら出ていかせれば良い。
俺は、以前の日常に戻る。
彼女もまた、以前の日常に戻る。
何の問題もないはずだ。元々は、それが当たり前だったのだから。
…それなのに。
俺は必死に…フューニャを引き留めようとしていた。
「…フューニャ。お前、家族は?」
「え?」
「近しい親類でなくても良い。ルティス帝国に家族はいないのか。俺が探してやる」
『青薔薇連合会』の権力を以てすれば…難しいことではない。
フューニャをこのまま、拠り所なく放り出すことは出来なかった。
「…残念ながら、いませんね」
「行政に頼ることは?」
「出来ません。私は…国籍がありませんから」
…やはり、そうか。
薄々そうではないかと思っていたが。
「…フューニャ、お前…脱国者なのか」
「…」
フューニャは、きつく唇を噛み締めた。
俺が入浴後に自分の寝室に入ると。
…何故か、ベッドの上の毛布がこんもりと盛り上がっていた。
「…何やってんの?」
「…」
フューニャが、毛布からぽこんと顔を出した。
…亀みてぇ。
「夜這いしようかと思いまして」
「すんなよ…」
しなくて良いって言っただろうに。
するとフューニャは、不満げに毛布から這い出た。
「私はあなたに施しを受けるばかりで、ちっともあなたにお返しが出来ていないので」
「しなくて良いよ。それに…充分返してもらってる。家のこと世話してくれてるし…」
「…それだけじゃ全然足りません」
「…」
だからって…夜這いは勘弁して欲しいのだが。
「あなたは優しいから、私の面倒を見てくれます。でも私は…それがとても申し訳ないのです。あなたの善意のみによって、私は生かされている…」
「…」
「これ以上ここにいたら、私はあなたに甘え続けてしまうでしょう。あなたに迷惑をかけ続けてしまう…。それは、嫌なんです」
フューニャは、これまでずっと言いたくて、言えなかったことを…初めて、口に出した。
…迷惑、か。
「もう充分、あなたには良くしてもらいました。これ以上あなたに甘えるのはいたたまれません。私を抱いてください。さもなければ、私をここから追い出してください」
「…」
好きでもない女は、抱けない。
だとすると、俺は彼女を追い出さなければならないが。
…でも、それも出来そうになかった。
「…お前を追い出すことは出来ない。追い出したら…お前はまた、身体を売ったり、金にならない占いをしたりして稼がないといけないんだろう?」
「…そうなりますね」
「そんな日々に戻りたいか?」
「…戻りたいはずがありません。でも…これ以上あなたの善意に甘える訳には」
俺はベッドサイドに腰を掛けた。
フューニャに何て言おうかと、考えていたのだ。
彼女が出ていく、と言うならそれを止めることは出来ない。
止める必要もないはずだ。元々彼女は居候なのだから、出ていくなら出ていかせれば良い。
俺は、以前の日常に戻る。
彼女もまた、以前の日常に戻る。
何の問題もないはずだ。元々は、それが当たり前だったのだから。
…それなのに。
俺は必死に…フューニャを引き留めようとしていた。
「…フューニャ。お前、家族は?」
「え?」
「近しい親類でなくても良い。ルティス帝国に家族はいないのか。俺が探してやる」
『青薔薇連合会』の権力を以てすれば…難しいことではない。
フューニャをこのまま、拠り所なく放り出すことは出来なかった。
「…残念ながら、いませんね」
「行政に頼ることは?」
「出来ません。私は…国籍がありませんから」
…やはり、そうか。
薄々そうではないかと思っていたが。
「…フューニャ、お前…脱国者なのか」
「…」
フューニャは、きつく唇を噛み締めた。


