その日帰宅すると、家の中が変わっていた。
フューニャが出ていった訳ではない。
「…綺麗になってる?」
「あ、お帰りなさい…。ルヴィアさん」
フューニャが顔を覗かせた。良かった。今日も出ていっていなかった。
「フューニャ。なんか…家の中が綺麗になってないか」
例えば、この廊下。
いつもより艶があるし…隅の方に溜まっていた埃も一掃されている。
それに、窓も。
曇っていたはずなのに、新品みたいにぴかぴかだ。
何より驚いたのが、キッチンだった。
ついつい放置してしまっていた油汚れが、いつの間にか綺麗になっている。
ハウスクリーニングでも頼んだみたいだ。
「はい。することがなかったので…。ちょっと、掃除してみました」
「…マジか…」
「余計なお世話でしたか?」
「いや、助かる」
男の独り暮らしだ。普段はつい、掃除は後回しにしてしまって…。細かい部分の掃除なんて、半年に一度、気が向いたときにするくらい。
汚れている箇所を見つけても、まぁ今度でいっか…なんて、見なかったことにする始末。
恥ずかしながら俺はそんな生活をしていたので、こうして家の中が綺麗になっていると、自分がどれだけ掃除をサボっていたのか思い知らされる。
「…それと、夕食も作ってみました」
「え、そこまでしたのか…?」
「はい。あなたが…身体での礼は要らないと言うので…。代わりに私に出来ることと言ったら、たかが知れてますから」
「…そうか」
俺としては…身体の礼より、こちらの方がよっぽど有り難い。
「と言っても、私はそんなに料理が上手くないので、お口に合わないかもしれませんが…」
「何作ったんだ?」
「私の生まれ故郷の郷土料理を」
フューニャの生まれ故郷の郷土料理?
…って、どんなの?
食卓には、既にその郷土料理とやらが湯気を立てていた。
…見たことのない料理だ。
見た目はクリームシチューに似てるんだけど…。クリームシチューよりはもう少し色が濃くて、甘いような酸っぱいような、独特の香りがする。
試しにと、俺は一口話食べてみた。
…ん?
「…どうですか?味は…」
「…不思議な味がする」
ルティス帝国では…なかなか味わえない不思議な味だ。
一言で言うと、甘ったるい味。
人工甘味料を牛乳で溶かしたみたいな…。申し訳ないがこれ以上は俺の拙い食レポでは伝えようがない。
好き嫌い分かれそうな味だが、俺は決して嫌いではない。
「…美味しくないですか?無理しないで良いですよ」
「いや…平気だ」
故郷の食事を美味しくないなんて言われたらショックだろうと思って、俺はそう答えた。
実際、不味い訳ではないし。
だが。
「そうですか…。まぁ私はその味、嫌いなんですけど」
おい。
「…嫌いなのに作ったのか?」
「作れる料理が他にあまりなくて…。他の料理はもっと不味いですから」
作れるレパートリーの中ではこれが一番まし…ということか。
俺はそんなに嫌いじゃないのだが…。
一体、何処の郷土料理なのだろう?
何にしても、帰ってきたとき食事を用意してもらっているというのは…なんとも言えない喜びがあるな。
独り暮らしをしている者なら、誰でも分かると思う。
「…ありがとな、フューニャ」
「…いえ。大したことでは」
変な味のクリームシチューもどきを食べながら、俺は窓の外を見た。
雨、ずっと降ってれば良いのにな、と思った。
フューニャが出ていった訳ではない。
「…綺麗になってる?」
「あ、お帰りなさい…。ルヴィアさん」
フューニャが顔を覗かせた。良かった。今日も出ていっていなかった。
「フューニャ。なんか…家の中が綺麗になってないか」
例えば、この廊下。
いつもより艶があるし…隅の方に溜まっていた埃も一掃されている。
それに、窓も。
曇っていたはずなのに、新品みたいにぴかぴかだ。
何より驚いたのが、キッチンだった。
ついつい放置してしまっていた油汚れが、いつの間にか綺麗になっている。
ハウスクリーニングでも頼んだみたいだ。
「はい。することがなかったので…。ちょっと、掃除してみました」
「…マジか…」
「余計なお世話でしたか?」
「いや、助かる」
男の独り暮らしだ。普段はつい、掃除は後回しにしてしまって…。細かい部分の掃除なんて、半年に一度、気が向いたときにするくらい。
汚れている箇所を見つけても、まぁ今度でいっか…なんて、見なかったことにする始末。
恥ずかしながら俺はそんな生活をしていたので、こうして家の中が綺麗になっていると、自分がどれだけ掃除をサボっていたのか思い知らされる。
「…それと、夕食も作ってみました」
「え、そこまでしたのか…?」
「はい。あなたが…身体での礼は要らないと言うので…。代わりに私に出来ることと言ったら、たかが知れてますから」
「…そうか」
俺としては…身体の礼より、こちらの方がよっぽど有り難い。
「と言っても、私はそんなに料理が上手くないので、お口に合わないかもしれませんが…」
「何作ったんだ?」
「私の生まれ故郷の郷土料理を」
フューニャの生まれ故郷の郷土料理?
…って、どんなの?
食卓には、既にその郷土料理とやらが湯気を立てていた。
…見たことのない料理だ。
見た目はクリームシチューに似てるんだけど…。クリームシチューよりはもう少し色が濃くて、甘いような酸っぱいような、独特の香りがする。
試しにと、俺は一口話食べてみた。
…ん?
「…どうですか?味は…」
「…不思議な味がする」
ルティス帝国では…なかなか味わえない不思議な味だ。
一言で言うと、甘ったるい味。
人工甘味料を牛乳で溶かしたみたいな…。申し訳ないがこれ以上は俺の拙い食レポでは伝えようがない。
好き嫌い分かれそうな味だが、俺は決して嫌いではない。
「…美味しくないですか?無理しないで良いですよ」
「いや…平気だ」
故郷の食事を美味しくないなんて言われたらショックだろうと思って、俺はそう答えた。
実際、不味い訳ではないし。
だが。
「そうですか…。まぁ私はその味、嫌いなんですけど」
おい。
「…嫌いなのに作ったのか?」
「作れる料理が他にあまりなくて…。他の料理はもっと不味いですから」
作れるレパートリーの中ではこれが一番まし…ということか。
俺はそんなに嫌いじゃないのだが…。
一体、何処の郷土料理なのだろう?
何にしても、帰ってきたとき食事を用意してもらっているというのは…なんとも言えない喜びがあるな。
独り暮らしをしている者なら、誰でも分かると思う。
「…ありがとな、フューニャ」
「…いえ。大したことでは」
変な味のクリームシチューもどきを食べながら、俺は窓の外を見た。
雨、ずっと降ってれば良いのにな、と思った。


