The previous night of the world revolution2〜A.D.〜

翌朝。

その日は、朝から雨が降っていた。

テレビでは気象予報士が、暗い顔で今後一週間の天気予報を喋っていた。

どうやら今日から一週間近く、ずっと雨続きだそうだ。

コインランドリーが儲かりそうだな…と思いながら、俺は朝食を作っていた。

二人ぶん、だ。

朝起きたら、フューニャはもういなくなっているかもしれない、と思ったのだが。

俺が起きてリビングに向かったとき、彼女はソファで作った簡易ベッドで寝息を立てていた。

余程疲れていたのだろう。俺が起きてきてごそごそしているのに、彼女は全然気づかずに寝付いていた。

朝食を作り、フューニャを起こさないように一人で食べていると。

「…ルヴィアさん」

「あ、おはよう…」

フューニャが起きてきた。昨晩よりかは、少し血色が良いように見える。

「よく寝てたから、起こさなかったんだ。朝食作ってあるから、食べろよ」

「…ありがとうございます」

俺は立ち上がって、フューニャの為に紅茶を淹れてやった。

淹れてから、もしフューニャがコーヒー派だったら悪いことをしたな、と思った。

自分が紅茶派なものだから…。我が家には、コーヒーを淹れる道具も材料もない。

インスタントコーヒーでも…買っておけば良かったな。

「悪い、コーヒーの方が好きだったか?」

「…いえ。紅茶の方が好きですから」

フューニャの前にティーカップを出すと、彼女は文句も言わずにそれを飲んだ。

フューニャの紅茶派なのか。それとも俺に気を遣って、そう言っただけなのか。

どちらかは分からないが…フューニャは黙って紅茶を飲み、朝食を食べた。

特に会話もなかった。

何て言って良いのか分からなかったのだ。多分…お互いに。

朝食を食べ終えてから、フューニャの方から沈黙を破った。

「…ルヴィアさん」

「うん?」

「私、出ていきます」

暗い顔で、彼女はそう申し出た。

ずっと言わなければいけないと思っていたことを、ようやく口に出した。

そんな風に見えた。

「…そうか」

「良くしてくれてありがとうございました」

彼女はそう言って立ち上がった。

しかし。

「…外、雨だぞ」

「…」

「今出ていったら、濡れて風邪引くぞ。雨具もろくに持ってないんだろう?」

「…それは…」

「雨がやむまで、雨宿りしていけよ。…出ていきたいなら、無理には止めないけど。傘くらいは持っていって良いし」

「…」

フューニャは、窓の外を眺めていた。

外は、ざあざあと雨が降り続いていた。

「…じゃあ、雨がやむまでここにいても良いですか」

「あぁ、そうしろ。…何もない家だけど」

とりあえず、雨風は凌げるだろう。

俺は、朝方フューニャが寝ている間にコンビニに行って買ってきたものを、ダイニングテーブルの上に置いた。

「食べるものと、それから…当面必要そうなもの買ってきたから、好きに使ってくれ」

「え…」

「俺は仕事に行ってくるから。家の中のものは何でも好きに使って良いが、使ったらもとに戻しておいてくれ」

「…」

そこまでされるとは思っていなかったようで、フューニャは驚いていた。

「出ていきたくなったら、いつでも出ていって良い。オートロックだから鍵は気にするな」

「…分かりました」

「それじゃ…俺は仕事に行くよ」

フューニャが頷くのを見届けて、俺は家を出た。

帰ってきたとき、フューニャがまだいるか、それともいなくなっているか、俺には分からなかった。

ただ、もし彼女がまだいるとしたら。

ケーキでも、買って帰ろうかな、と思った。