フューニャに食事を摂らせた後。
「そういえば、傷…手当てしなくて大丈夫か?」
不良共に蹴られていたのを思い出し、俺はそう声をかけた。
「平気です。これくらい…日常茶飯事ですし」
傷を負うのが日常茶飯事…か。
まるで俺と同じじゃないか。
「それでも…消毒くらいはした方が良い」
俺は引き出しに入れていた消毒液とガーゼを、フューニャに渡した。
「やろうか?」
「いえ…自分で出来ます」
「そうか」
「あ…見たかったですか?」
「見ねーよ」
何を言い出すんだ。別にそういう意味で勧めた訳じゃない。
フューニャが服を捲って傷口を消毒している間、俺はくるりと背中を向け、絶対に振り向かなかった。
良いか。俺に。下心は全くない。
ルレイアさんじゃないんだから。
「…終わりました」
「あぁ」
俺は消毒液を引き出しに片付け、湿ったガーゼを捨てた。
ガーゼには、少し血が滲んでいた。
「それと…うち、ベッドは一つしかないから…ソファで寝てもらうことになるんだが」
「別に何処でも構いません。床でも」
さすがに床に寝かせる訳にはいかない。
俺は押し入れから毛布とシーツを引っ張り出して、ソファを臨時の簡易ベッドに整えた。
ベッドと呼ぶには粗末な代物だが、昨日まで路地裏で地面の上に寝ていたであろうフューニャにとっては、立派な寝床に見えるのかもしれない。
「…それじゃ、お休み」
「はい。お休みなさい」
俺はフューニャをリビングに残し、自分の寝室に戻った。
とっくに日付は変わっているし、疲れていたから…俺は、すぐに眠りにつくことにした。
ちなみに、浮浪者であるフューニャが強盗犯と化すかもしれない可能性があることについて、考えていない訳ではなかった。
よくある話だろう。
孤児や浮浪者を慈悲の気持ちから一夜の宿を与えたら、家主が寝ている間に家中の金目のものを盗まれ、逃げられてしまった、なんて。
もっとタチが悪い場合、家主を殺して逃げることもある。
恩を仇で返される訳だ。
これについては、俺は特に心配していなかった。
財布やらカードやらは、俺の寝室に置いてある。
職業柄、悪意やら殺意やらには非常に敏感だから。
彼女がこの部屋に、悪意を持って忍び込んでくれば、すぐに気づくだろう。
寝室に忍び込まず、リビングやダイニングを荒らして逃げる可能性もあるが…。
それはそれで別に構わない。
あの部屋にある、金目のものなんてたかが知れている。
持っていきたければ持っていけば良い。どうせ大した金にはなるまい。
そう思って、俺は安心しきって眠った。
しかし実はその後、フューニャは俺の寝室に忍び込んでくる。
だが、その目的は…強盗ではなかった。
「そういえば、傷…手当てしなくて大丈夫か?」
不良共に蹴られていたのを思い出し、俺はそう声をかけた。
「平気です。これくらい…日常茶飯事ですし」
傷を負うのが日常茶飯事…か。
まるで俺と同じじゃないか。
「それでも…消毒くらいはした方が良い」
俺は引き出しに入れていた消毒液とガーゼを、フューニャに渡した。
「やろうか?」
「いえ…自分で出来ます」
「そうか」
「あ…見たかったですか?」
「見ねーよ」
何を言い出すんだ。別にそういう意味で勧めた訳じゃない。
フューニャが服を捲って傷口を消毒している間、俺はくるりと背中を向け、絶対に振り向かなかった。
良いか。俺に。下心は全くない。
ルレイアさんじゃないんだから。
「…終わりました」
「あぁ」
俺は消毒液を引き出しに片付け、湿ったガーゼを捨てた。
ガーゼには、少し血が滲んでいた。
「それと…うち、ベッドは一つしかないから…ソファで寝てもらうことになるんだが」
「別に何処でも構いません。床でも」
さすがに床に寝かせる訳にはいかない。
俺は押し入れから毛布とシーツを引っ張り出して、ソファを臨時の簡易ベッドに整えた。
ベッドと呼ぶには粗末な代物だが、昨日まで路地裏で地面の上に寝ていたであろうフューニャにとっては、立派な寝床に見えるのかもしれない。
「…それじゃ、お休み」
「はい。お休みなさい」
俺はフューニャをリビングに残し、自分の寝室に戻った。
とっくに日付は変わっているし、疲れていたから…俺は、すぐに眠りにつくことにした。
ちなみに、浮浪者であるフューニャが強盗犯と化すかもしれない可能性があることについて、考えていない訳ではなかった。
よくある話だろう。
孤児や浮浪者を慈悲の気持ちから一夜の宿を与えたら、家主が寝ている間に家中の金目のものを盗まれ、逃げられてしまった、なんて。
もっとタチが悪い場合、家主を殺して逃げることもある。
恩を仇で返される訳だ。
これについては、俺は特に心配していなかった。
財布やらカードやらは、俺の寝室に置いてある。
職業柄、悪意やら殺意やらには非常に敏感だから。
彼女がこの部屋に、悪意を持って忍び込んでくれば、すぐに気づくだろう。
寝室に忍び込まず、リビングやダイニングを荒らして逃げる可能性もあるが…。
それはそれで別に構わない。
あの部屋にある、金目のものなんてたかが知れている。
持っていきたければ持っていけば良い。どうせ大した金にはなるまい。
そう思って、俺は安心しきって眠った。
しかし実はその後、フューニャは俺の寝室に忍び込んでくる。
だが、その目的は…強盗ではなかった。


