《夜のお店編》



次にルヴィアが俺に相談に来たのは、煙草の話をした二週間後のことであった。







「ちょっと良いですか…。ルルシーさん」

「ルヴィア…。一体どうしたんだ?」

「聞いて欲しいことがあって…」

「…?」

随分…暗い顔をしているが…一体何事だろうか。

「一体何が…」

ルヴィアに近寄ろうとすると、ルヴィアははっ、として数歩下がった。

…何故下がる?

「どうした?」

「済みません…。その、あんまり…近寄らないでもらえますか。匂いが…気になるので」

えっ。

人生で初めて言われた。

俺は咄嗟に、自分で自分の体臭を確認した。

まだ若いつもりだが…。もう加齢臭的なものが。

「あ、待ってくださいルルシーさん。違うんです。別にルルシーさんが臭いなんて言ってません」

「え…でも匂いが気になるって」

「匂いと言うか…その、香水の匂いが」

「…?」

香水…?

俺は確かに…香水をつけてはいるけれど。

ルレイアが愛用している、嗅いだだけでくらっとするような、オリエンタルな香水ではない。

自分では結構気に入っている香りだったが…。ルヴィアは気になるのだろうか?

「これ、そんなに変な匂いか…?」

「いえ…。その香水の香りが駄目なんじゃないんです。香水の香りそのものが駄目で…」

「え…」

香水が駄目…って?

ルヴィアって、そんなに匂いに過敏なタイプだっけ?

「下手に香水の匂いを服につけて帰ったら…。嫁が怒るので…」

「…」

…そういうことか。

ルヴィア本人に問題があるのではない。

彼の相談事はやはり、妻が原因であるようだ。