The previous night of the world revolution2〜A.D.〜

ルーザはよく、夜に私の屋根裏部屋にやって来た。

そして、私に自分の理想を語って聞かせてくれた。

彼の理想は、綺麗事だけではなかった。

彼なりに、ちゃんと現実も見ていたのだ。

「まず真っ先にすべきことは、憲兵局の解体だ」

ルーザはまず、箱庭帝国を支配する組織の名前をあげた。

憲兵局を解体、なんて。

一歩でも外に出てこんなことを言ったら、恐ろしい目に遭っていただろう。

ほとんどの人民は、憲兵局の解体なんて頭にも思い浮かばない。

こんなことが平気で頭に浮かぶ時点で、ルーザは普通ではなかった。

その普通ではないルーザの意見を聞いても、成程と思って頷く私も、同じくらいどうかしてるが。

「そして、主権を国民の手に返す。国民一人一人に選挙権を能えて、国民が選んだ人間が国政を任されるべきなんだ」

「そうね」

つまりルーザは、箱庭帝国を民主主義国家にしようと言っている訳だ。

憲兵局の人間が聞いたら、目の色を変えるだろうな。

「国民はもっと自由であるべきなんだ。人間は考えることを放棄してはいけない。人に言われて何かを強制されるんじゃなくて、自分で決めないと。自分で決めることが出来る、環境を整えなきゃいけない」

「…どうやってそんなことをするの?」

言うは易し、という奴ではないか?

するとルーザは、よくぞ聞いてくれたという顔をした。

「まずは学校で行われる教育を、根本的に変えるんだ。子供達に、自分のことを自分で選択する権利があるんだってことを教える。そして子供のうちから、選択する機会を増やすんだ」

「子供が、どんなことを選ぶの?」

「簡単なことで良いんだよ。自分の受けたい授業とか。どんな種類の文具を使うかとか」

どんな種類の文具…って言っても。

思い出す。学校にいた頃、どんな文具を使っていたか。

皆同じものを使っていた。国から支給される、地味な濃い緑の鉛筆と、表紙に帝国の国旗の写真がプリントされたノート。

「…選ぼうにも、一種類しかないわ」

他の種類の鉛筆やノートを使っている人なんて一人もいなかった。

それは選べる権利がない以前に…国内でその一種類しか生産されていないからだ。

「そう。だからその前に、今の鎖国制度をやめるんだ。箱庭帝国を、今よりずっと開かれた国にする。他国と自由に貿易を出来るように、港と、ルティス帝国との国境も開放するべきだ」

「…そうしたら、どうなるの?」

「他国のものがたくさん入ってくる。文具は勿論、衣服や食料も」

他国産の衣服や食料!それって、一体どんなものなのだろう?

私には想像もつかない。

「その為にはやっぱり、憲兵局が邪魔だ。奴らを何とかしないことには…」

「…何とかなりそう、なの?」

「…どうかな」

ルーザは難しい顔をして、声を曇らせた。