The previous night of the world revolution2〜A.D.〜

「…それで?我々に何の用だ。挨拶することが目的、という訳ではあるまい」

「失礼な。俺、あなた方を労ってあげようと思ってきたんですよ…。学生の下らない自由研究に付き合わされて、心底うんざりしてるだろうと思ったので」

「…ランドエルスの生徒と聞いて、わざわざ来たんだがな」

「スパイについて探りたかったんでしょう?とんだ期待外れでしたね」

『シュレディンガーの猫』について探るつもりが、出てきたのは俺。

スパイはスパイだが、スパイ違いだ。

「しかも、そのほとんどが…貴殿に聞けば事足りるような質問ばかりだった」

「俺だってそう思いましたよ。でも仕方ないでしょう?俺にもポジションってものがあるんですから」

ルナニア・ファーシュバルを演じる以上、こういったことに関しては、無知を装っておかなければならない。

悲しいことにな。

「彼らだけならどうとでもあしらえたが…。貴殿だけは、どうにもならないからな」

「うふふ。まぁ良いじゃないですか。知りたかったことは知れましたよ」

ランドエルスのスパイ、つまりハバナについては…俺が情報提供しよう。

だが、帝国騎士団側としては複雑な思いだろうな。

協力関係とはいえ…マフィアから情報提供してもらう、なんて。

ユリギウスやアストラエアが歯軋りしているのが目に見えるようだ。

「あぁ、それと。ランドエルスに潜入していたという事実を隠したのは、俺の判断ですから。ルルシーを責めるのは駄目ですよ」

俺がわざわざ、取材の後でリーヴァ達に会いに来たのは、これを言う為であった。

帝国騎士団をイライラさせるのは楽しいが、今向こうには、ルルシーが人質になっているからな。

下手なことをして、ルルシーに報復でもされたら堪らない。

「それじゃ、俺は帰ります」

「あぁ」

くるりと踵を返し、言い残したことを思い出して振り向いた。

「ウィルヘルミナさん。抱いて欲しかったらいつでも連絡くださいね」

「消えろ」

軽い冗談を言っただけなのに、可愛くない。

そんなこと言って、内心期待してるの知ってるんだからな?

俺は妖艶に笑って、その場を去った。






「…相も変わらず、恐ろしい男だ。オルタンス殿はよく、あの男を敵に回せるな…」

リーヴァは、俺の後ろ姿を眺めながら、そう呟いた。