The previous night of the world revolution2〜A.D.〜

さて、ではゴキブリアリューシャが具体的に、どうやって生きてきたのかを説明しよう。

愉快な話ではないことだけ、先に保証しておく。

人間が生きていく為には、まず食う必要がある訳で。アリューシャの心配事も、まず食べ物に関することが最たるものであったので。

まず、何食って生きていたのかを話そう。

こう見えて、アリューシャはグルメだった。

色々食べたけど、一番美味かったのは、場末の大衆食堂。の、裏手のポリバケツに捨てられてた残飯。

残飯だから、色んな料理の食べ残しと、野菜の皮などがミックスされて、なんだか贅沢な残飯だった。

でも、これはあんまり食べられなかった。

というのも、あんまり食堂の裏でごそごそしてると、おばちゃんにしばかれたからだ。

だから、よっぽど食べ物に困ったときでないと、その食堂には行かなかった。

更に、物乞いで食べ物をせしめることもあった。

たまに帝都の裕福な高級住宅街に行って、そこの優雅な奥様達に、いかにも憐れっぽい口調で「何か食べるものをください…」と頼んだ。

すると、同情した奥様が何かしら食べるものをくれた。

ただし、これもやり過ぎるとくれなくなるので、程々にしなければならなかった。

それに、物乞いが成功することは多くなかった。

大抵の奥さんが、アリューシャの汚ならしい姿を見て、とっとと家から出ていけ、と言った。物を投げられることもあった。

素直に物乞いする浮浪児なら可愛いもので、タチの悪い浮浪児だと、物乞いに見せかけて家の中に押し入ってきたり、もっと悪いのだと、平気で強盗殺人を行う子供もいたから。

アイ公もそういうタイプだったらしい。彼の場合は物乞いを装うことはなく、追い剥ぎ殺人をやっていたそうだが。

アリューシャは少なくとも、殺人はやらなかった。

少なくとも、浮浪児をやっていた頃は。

でも、人を殺すことに抵抗があった訳じゃない。

生きる為に必要とあれば、アリューシャは躊躇いなく人の命を奪っていただろう。

実際その後のアリューシャは、まるでゴキブリをぷちぷち潰すかのように人を殺すようになるのだから。

さて、では食べ物の話に戻ろう。

食堂のゴミ漁りも、物乞いも、そう頻繁に出来ることではなかった。

なのでアリューシャは、ほとんど毎日のように、食べ物を得る為にゴミ捨て場を漁っていた。

結局、金を払わずに食べ物を得ようと思ったら、そうするより他にない。

幼い頃のアリューシャがやっていたことと言えば、このゴミ漁りがメインであった。