The previous night of the world revolution2〜A.D.〜

その日を境に、ユーシャとの距離はぐっと縮まった。

文化祭の準備にかこつけて、俺達は二人きりで話し合ったり、放課後にファミレスに寄るということもしばしば。

一応俺の彼女はカセイ、つまりハバナであると知れ渡っているから、ユーシャもそれ以上踏み入ってくることはなかった。

けれども、俺の豊富過ぎる女性経験から鑑みると、彼女がそれ以上の関係を求めているのは明らかだった。

クラスメイトに、特に男子からは見向きもされなかったユーシャ。

初めて兄以外の男に優しくされた彼女は、盲目的に俺に好意を抱いているようだった。

その証拠に、彼女は俺と二人きりになると、途端に饒舌に喋り出した。





「私のお兄様は、本当に優しいの。この間も会いに来てくれて…。一緒にカフェにランチしに行ったのよ」

そして、ユーシャが喋ることと言ったら…大半が、兄のことだった。

このブラコンめ。

「そうなんですか。楽しそうですね」

「えぇ。とても楽しかったわ」

聞くところに寄るとこの兄妹、本当に仲が良いようで。

ほとんど毎週末会っては、何処かに出掛けたり、一緒に食事をしたりしているようだ。

暇人め。仕事しろよ。

「でも、お兄さん忙しいんじゃないですか?お仕事とか…」

「お兄様、帝国騎士団をやめてからは特にお仕事はしていないの。心の傷を癒やすまでは…とても、お仕事なんて出来ないと思うわ」

と、悲しげに呟くユーシャ。哀れな兄を可哀想だと思っているようだ。

馬鹿なんじゃね?つまりそれニートしてるってことだろ?

「じゃあ、今はユーシャさんのお母様からの援助だけで?」

「そうね」

親の脛齧って良いご身分だな糞が。本当にニートじゃないか。

で、その金で優雅に妹とランチ?何処まで面の皮が厚かったらそんなことが出来るんだ?

親も息子も馬鹿だし娘も馬鹿。フルコンボだな。

「そうですかぁ。俺一人っ子なので、兄弟がいるってなんだか羨ましいですねぇ」

実は俺にも昔は姉がいたような気がするが、あれはもう蝋人形みたいなものだからなぁ。

「本当に楽しいのよ。お兄様、とても優しくて…。昔からよく遊んでくれたわ」

その遊びってのは、寄って集って人をタコ殴りにしたり、雑巾の水を頭からぶちまけたり、一日中正座させて動くことを禁じるとか、そういう「楽しい」遊びじゃなかったんだろうな。

糞が。

「お兄さん、ユーシャさんのことが大切なんですね」

「うん…。そう思ってくれてるみたい」

そりゃ良かった。

ユーシャからこうやってシューレンの話を聞くのは、俺にとっては堪らなく不愉快なことだった。

糞シューレンをユーシャが褒め称える度に、お前、自分が学生時代に何をしたのか妹に教えてやれよ、と叫びたくなる。

シューレンと、その妹であるユーシャへの憎しみは、募るばかりであった。

それなのに。

「ルナニアさんも…。今度、お兄様に紹介させて。ルナニアさんは、私にとってとても大切なお友達だから…」

ユーシャは照れ臭そうに、そんなことを提案してきた。

…シューレンに会え、だと?

そりゃあ良い。あいつが俺に会って、何て言うのか…是非とも見てみたいものだ。

「良いですよ。俺もユーシャさんのお兄さんに会ってみたいです」

どんな言い訳をするのか、楽しみじゃないか。