The previous night of the world revolution2〜A.D.〜

言うまでもないが、俺はこの女も、シューレンも許すつもりはない。

考えうる限りの残酷な方法で殺してやりたいと思っている。

けれども、それを今やる気はない。

だって、今やったら面白くないだろう?

「そうなんですか…。優しいお兄さんなんですね」

「うん」

兄を褒められて、ユーシャは初めて笑顔を見せた。

兄のことが本当に好きならしいな。あのゴミのことが。

で、あいつは学生時代に何をしたのか、自分の妹に一言も言ってないのか?

もしそのことをユーシャが知れば、兄に対する評価が少しでも変わるのだろうか。

何だかんだ言って庇いそうだな。ユーシャのこの様子だと。

この時点であまりのおぞましさに吐き気がするが、だが、まだ帰す訳にはいかない。

「でも…お兄さん、その…つまり、家から追い出されたんでしょう?」

「えぇ…」

「なら、今はどうしてるんですか?」

俺もそうだったが、元貴族の人間が家を追い出され、市井に落ちたら…その後、生きていくのは大変だ。

何せ、今まで帝国騎士になる為の教育しか受けてこなかったのだから。今更「普通に」生きていくなんて、余程の覚悟がないと不可能だ。

あのシューレンのことだ。人をいじめて、傷つけて遊ぶような正真正銘の糞野郎だ。

そんな覚悟があるはずがない。

なら、今のシューレンはどうやって生きてるんだ?

「母が…兄のこと心配して、市井に落ちた今でも、定期的に援助をしてるから。貴族じゃなくなっても、家族であることには変わりはないもの」

「…」

成程。そういうことね。

実に甘ちゃんで羨ましい限りだ。

まぁ、そんなことだろうとは思っていたが。

息子が気違いだったら、母親も気違いなんだな。

この馬鹿女も気違いっぽいし。気違い一家か。お気の毒。

害悪だからさっさと消えてくれないかな。

あぁ、嫌だ嫌だ。段々口が悪くなっていく。俺はもっとこう、本来、上品な人間だったはずなんだが。

「そうなんですか…。ちなみに、お兄さんもランドエルスの卒業生なんですか?」

分かっていながら、敢えて尋ねる。

「ううん。帝国騎士官学校なの」

私の兄は「あの」帝国騎士官学校の卒業生なのだと、心なしかユーシャは自慢気だった。

そりゃ国内最高峰の教育機関を出たともなれば、それだけで大きなステータスになる。

どや顔してるところ悪いけど、俺も卒業生だから。

しかも、主席卒業生だから。

「帝国騎士官学校ですか。凄いですね」

「うん。でも…私はとてもじゃないけど受からなくて」

だろうね。

「だから、お兄様は我が家の自慢のお兄様なの。今は、家にはいないけど…」

「そうですか…。仲が良いんですね?」

「うん。とっても」

そりゃ良かったね。あんな糞ゴミが我が家の自慢とは。落ちるところまで落ちたもんだな。

ユーシャがいじめられる理由が分かった気がするよ。