The previous night of the world revolution2〜A.D.〜

ガンッ!!と重い音がした。

何の音だろうかと、少し考えた。

俺が、路肩の電柱を殴った音だった。

重い痛みを感じる前に、恐ろしいほどの怒りが込み上げてきた。

制服を着ているのに、特殊メイクで顔を変えているのに、ルナニアとしての化けの皮が剥がれているのが分かった。

俺のいきなりの豹変に、カセイがぎょっとしていた。

彼女もマフィアでなければ、俺の今の闇のオーラだけで、恐怖のあまり立ち竦んでいたことだろう。

いやはや、物に当たるのは良くないな。やめよう。

「…糞が」

アイヒベルガー、だと?

忘れるはずがない。あの名前を。

思い出しただけで吐き気がする。憎しみだけで人が殺せるなら、とっくにあの男は俺に殺されているだろう。

シューレン・ベルント・アイヒベルガー。

あの忌々しい帝国騎士官学校で、俺を集団リンチにした、筆頭の男だ。

帝国騎士団で事件を起こしてクビにされたと聞いたが…。

「あの男に…何か因縁があるのか」

「騎士官学校時代の『大親友』ですよ。彼のことは殺したいほど大好きです」

今目の前にいたら、確実にぶっ殺してる。

死ねば良いんだ。あの糞野郎は。

「で、ユーシャってのはアイヒベルガー家の人間なんですか」

「あぁ。貴族と言っても、今はもう…落ちぶれたそうだが」

「…ふーん…」

恐らく、そのシューレンのせいだろうな。

何せ、帝国騎士団をクビにされるくらいの事件を起こしたというのだから…落ちぶれるのも無理はない。

その点俺も同じであるはずだが、うちの場合は姉の権威と、元々ウィスタリア家はルティス帝国でもかなり上位の貴族である為。

俺が女王暗殺未遂事件を起こしても(冤罪だが)、家ごと落ちぶれるということはなかった。

でも、シューレンの家は違う。

家が落ちぶれたのは紛れもなくシューレンのせいだろうが…。ユーシャというのは、シューレンとどのような関係なのか。

従兄弟か、妹か…。別に何でも良いが。

「…予定変更しますよ。カセイさん」

「…何を?」

「俺はあの女を…放っておく訳にはいかない」

シューレンの、家族であるなら。

俺にとっては、復讐の対象も同然だ。