アシュトーリアさんと初めて会った日。
あろうことか、私は彼女を殺そうとしていた。
そう。最初彼女は、私の獲物だったのである。
その夜、私はいつものように路地裏に潜んで、無防備な獲物が通り掛かるのを待っていた。
路上で生活するようになって、私の他人を見る観察眼は、随分と発達していた。
一見しただけで、この人は無害だなとか、この人は相手にしたらヤバいとか、ある程度察知出来るようになっていた。
そうやって私はターゲットを選んでいた。
どんなに細身で軽装で、軟弱そうに見える人でも、この人は相手にすると不味いな、と思ったときには手を出さなかった。
逆に、どんなに俊敏そうで、屈強そうに見えても、この人は勝てると思ったら、容赦なく襲った。
そしてそういうときは、いつも上手く行った。
自分の観察眼には自信があった。文字は読めないし計算も出来ないけど、この観察眼についてだけ言えば、誰にも負けないつもりだった。
その夜暗がりを軽やかに歩いてきたのは、大丈夫な方の人に見えた。
今でも、見た目だけ見たら、アシュトーリアさんがマフィアのボスだということは信じられない。
今でさえそうなのだから、当時の私に、そんなことが分かるはずがなかった。
絶対に手を出してはいけない人に、手を出してしまった。
愚かにも、私はいつものようにナイフを忍ばせて、通り過ぎようとする彼女の腕を掴んだ。
驚いたような顔をしたアシュトーリアさんの身体に、ナイフを突き刺そうとした。
その動きに、少しの躊躇いもなかった。
しかし、私のナイフが彼女の身体に刺さることはなかった。
気がついたら、私なんかよりずっと素早い動きで、ナイフを握る私の手ががっちりと掴まれていた。
奇襲した私の方が驚くなんて、おかしな話だ。
アシュトーリアさんは素早く私のナイフを奪い取り、地面に捨てた。
同時に、片手で私の腕を掴んだまま捻り上げ、もう片方の手で拳銃を抜き、私のこめかみに銃口を向けた。
こうされると、私に為す術はない。
「全くもう…。手癖の悪い子ね」
およそ10年前、初めて出会ったとき、彼女が私に言った第一声がこれだった。
呆れたような、それでいて優雅で楽しげな声音だったことを覚えている。
あろうことか、私は彼女を殺そうとしていた。
そう。最初彼女は、私の獲物だったのである。
その夜、私はいつものように路地裏に潜んで、無防備な獲物が通り掛かるのを待っていた。
路上で生活するようになって、私の他人を見る観察眼は、随分と発達していた。
一見しただけで、この人は無害だなとか、この人は相手にしたらヤバいとか、ある程度察知出来るようになっていた。
そうやって私はターゲットを選んでいた。
どんなに細身で軽装で、軟弱そうに見える人でも、この人は相手にすると不味いな、と思ったときには手を出さなかった。
逆に、どんなに俊敏そうで、屈強そうに見えても、この人は勝てると思ったら、容赦なく襲った。
そしてそういうときは、いつも上手く行った。
自分の観察眼には自信があった。文字は読めないし計算も出来ないけど、この観察眼についてだけ言えば、誰にも負けないつもりだった。
その夜暗がりを軽やかに歩いてきたのは、大丈夫な方の人に見えた。
今でも、見た目だけ見たら、アシュトーリアさんがマフィアのボスだということは信じられない。
今でさえそうなのだから、当時の私に、そんなことが分かるはずがなかった。
絶対に手を出してはいけない人に、手を出してしまった。
愚かにも、私はいつものようにナイフを忍ばせて、通り過ぎようとする彼女の腕を掴んだ。
驚いたような顔をしたアシュトーリアさんの身体に、ナイフを突き刺そうとした。
その動きに、少しの躊躇いもなかった。
しかし、私のナイフが彼女の身体に刺さることはなかった。
気がついたら、私なんかよりずっと素早い動きで、ナイフを握る私の手ががっちりと掴まれていた。
奇襲した私の方が驚くなんて、おかしな話だ。
アシュトーリアさんは素早く私のナイフを奪い取り、地面に捨てた。
同時に、片手で私の腕を掴んだまま捻り上げ、もう片方の手で拳銃を抜き、私のこめかみに銃口を向けた。
こうされると、私に為す術はない。
「全くもう…。手癖の悪い子ね」
およそ10年前、初めて出会ったとき、彼女が私に言った第一声がこれだった。
呆れたような、それでいて優雅で楽しげな声音だったことを覚えている。


