The previous night of the world revolution2〜A.D.〜

さて、十歳そこそこの子供が、貧民街で一人ぼっちで、どうやって生きてきたのか。

色々想像は出来ると思うが、どれも愉快なものではないことはお分かり頂けると思う。

ルルシーは身体を売って生きていたそうだが、私はもっと質が悪い生き方をしていた。




夜。外灯の少ない路地の片隅で、私は息を殺していた。

肉食獣のように、感覚を研ぎ澄ませて獲物が来るのを待っていた。

私は辛抱強く待った。いつまででも待っていた。

一晩中、獲物が来ない日もざらにあった。

でも…その日は、来た。

遠くから、仕事帰りらしいスーツ姿の女性が、急ぎ足で歩いてくるのが見えた。

私は自分の気配を消し、物音を立てないように、微動だにしなかった。

そして。

女性が路地を横切るその瞬間、猫のように素早く手を伸ばした。

スーツの襟首をがっちりと掴み、そのまま路地に引き摺り倒す。

女性が悲鳴をあげる前に、その喉元に深々とナイフを突き刺した。

ここを刺せばすぐに死ぬと、私は経験から知っていた。

一瞬にして力が抜けて、地面に崩れ落ちる女性の手から、バッグを奪い取った。

その中から財布とスマートフォンを取り出し、ポケットに入れる。

次に女性がつけていた指輪と、小さなダイヤモンドがついたネックレスを外す。

この獲物は、なかなか優秀であるようだ。

これが済めば、この女性にもう用はない。そのまま放置して、その場を去る。

明日か明後日になれば、誰かに見つけてもらえるだろう。

私がやっていたことは、簡単に言えば、追い剥ぎである。

でも私のやり方は、酷く悪辣だった。身ぐるみを剥ぐだけでは飽き足らず、その人を殺してしまっていた。

刃物で脅すだけでは、叫んだり、暴れられたりする恐れがある。顔を覚えられて、後で警察に通報される可能性もあった。

だったら最初に殺してしまった方が、楽に仕事を進められる。

私は実の親でさえ手にかけたのだから、赤の他人を殺すことに躊躇いなどなかった。

財布の中身だけを取り出して、あとは川に放り投げる。

指輪やネックレス、それからスマートフォンは、闇市場で売ればそれなりの値段がつく。

これが、私の生業だった。