「…」
「…くっ…」
呻いたのは、ハバナの方である。
「遅いですよ、お嬢さん」
彼女の喉元に這うように、俺の仕込みナイフが鋭く光っていた。
もしハバナがトリガーに指を当てたら、その瞬間にこのナイフを引くつもりであった。
ちなみにこの仕込みナイフは、常に袖の内側に忍ばせている。マフィアのたしなみである。
ハバナが拳銃を取り出して俺の喉元に当てる、その動作はよく訓練されたものだった。
一般人であったら、驚く暇もなく脳漿を散らしていたことだろう。
でも俺にとっては、遅い。
あの忌々しい帝国騎士団の隊長連の中でも、俺の速さは随一だった。
スピードだけに関しては、俺に並ぶ者はいないのではなかろうか。
こればかりは、相手が悪かったな。
ハバナが拳銃を向けようとするのを視認してから、俺はナイフを彼女に向けた。
これだけで、相手が自分より遥かに格上だということは、理解したはずだ。
「…お前、帝国騎士団の人間か」
ハバナは普段のクールな姿をかなぐり捨て、全身から殺気を滲ませながら、憎しみのこもった声で尋ねた。
とても、ランドエルスの平和な女子学生には見えない。頭までどっぷりと黒社会に染まった、マフィアのそれ。
「良いですね、あなた…。今の方が余程魅力的ですよ」
恐らく、俺も今、彼女と同じ。
普段の姿とはかけ離れて、生き生きと輝いていることだろう。
「質問に答えろ!」
「えぇ、お答えしましょう。帝国騎士なんて、あんな糞みたいな連中と一緒にしないで頂きたい」
「…」
自分が『シュレディンガーの猫』だと知っている。それを知りうるのは、帝国騎士団くらいのもの。
ハバナはそう思っていたのだろう。だが、それは大きな間違いだ。
「…なら、お前は何だ」
「聞いたことがあるでしょう?『青薔薇連合会』」
「…!」
ルティス帝国にいるなら、彼女も耳にしたことはあるはずだ。
俺達の組織の名前を。
「同じ非合法組織同士、積もる話もあるでしょう?仲良くお喋りしましょうよ。これを降ろして」
俺の喉元に突きつけられた拳銃を指でつつく。
「…」
しかし、ハバナは険しい顔のまま動かない。
ふふふ。確かに猫らしい。可愛いくらい警戒している。
「大丈夫。悪いようにはしませんよ。それに…」
「…」
「あなたがその引き金を引く前に、あなたの首から血飛沫が飛んでいるでしょうね?」
「…ちっ」
正面から戦っても俺には勝てないと判断したらしく。
ハバナは拳銃を降ろした。
よしよし、賢い猫だ。
彼女が降ろしてから、俺もナイフをしまった。
隙を狙ってハバナがまた拳銃を向けてくる恐れもあるが、あの動きなら充分に対応出来る。
所詮、ハバナ・ユールシュルという女そのものは、全く怖くなどないのだ。
では始めようか。俺の一世一代の「告白」を。
「…くっ…」
呻いたのは、ハバナの方である。
「遅いですよ、お嬢さん」
彼女の喉元に這うように、俺の仕込みナイフが鋭く光っていた。
もしハバナがトリガーに指を当てたら、その瞬間にこのナイフを引くつもりであった。
ちなみにこの仕込みナイフは、常に袖の内側に忍ばせている。マフィアのたしなみである。
ハバナが拳銃を取り出して俺の喉元に当てる、その動作はよく訓練されたものだった。
一般人であったら、驚く暇もなく脳漿を散らしていたことだろう。
でも俺にとっては、遅い。
あの忌々しい帝国騎士団の隊長連の中でも、俺の速さは随一だった。
スピードだけに関しては、俺に並ぶ者はいないのではなかろうか。
こればかりは、相手が悪かったな。
ハバナが拳銃を向けようとするのを視認してから、俺はナイフを彼女に向けた。
これだけで、相手が自分より遥かに格上だということは、理解したはずだ。
「…お前、帝国騎士団の人間か」
ハバナは普段のクールな姿をかなぐり捨て、全身から殺気を滲ませながら、憎しみのこもった声で尋ねた。
とても、ランドエルスの平和な女子学生には見えない。頭までどっぷりと黒社会に染まった、マフィアのそれ。
「良いですね、あなた…。今の方が余程魅力的ですよ」
恐らく、俺も今、彼女と同じ。
普段の姿とはかけ離れて、生き生きと輝いていることだろう。
「質問に答えろ!」
「えぇ、お答えしましょう。帝国騎士なんて、あんな糞みたいな連中と一緒にしないで頂きたい」
「…」
自分が『シュレディンガーの猫』だと知っている。それを知りうるのは、帝国騎士団くらいのもの。
ハバナはそう思っていたのだろう。だが、それは大きな間違いだ。
「…なら、お前は何だ」
「聞いたことがあるでしょう?『青薔薇連合会』」
「…!」
ルティス帝国にいるなら、彼女も耳にしたことはあるはずだ。
俺達の組織の名前を。
「同じ非合法組織同士、積もる話もあるでしょう?仲良くお喋りしましょうよ。これを降ろして」
俺の喉元に突きつけられた拳銃を指でつつく。
「…」
しかし、ハバナは険しい顔のまま動かない。
ふふふ。確かに猫らしい。可愛いくらい警戒している。
「大丈夫。悪いようにはしませんよ。それに…」
「…」
「あなたがその引き金を引く前に、あなたの首から血飛沫が飛んでいるでしょうね?」
「…ちっ」
正面から戦っても俺には勝てないと判断したらしく。
ハバナは拳銃を降ろした。
よしよし、賢い猫だ。
彼女が降ろしてから、俺もナイフをしまった。
隙を狙ってハバナがまた拳銃を向けてくる恐れもあるが、あの動きなら充分に対応出来る。
所詮、ハバナ・ユールシュルという女そのものは、全く怖くなどないのだ。
では始めようか。俺の一世一代の「告白」を。


