続お菓子の国の王子様〜結婚に向けて〜       花村三姉妹  美愛と雅の物語

仁が教えてくれた、今朝の久美子さんと圭衣ちゃんのこと。

 
いつも明るく、賑やかで頼もしい2人だが、今日ばかりは、末っ子・美愛ちゃんの結婚を喜ぶ一方で、急に寂しさを感じてしまったらしく、ほとんど美愛ちゃんとまともに会話できない状態だったという。

 
その様子を見かねて、葉子ちゃんが2人に“お説教”をしていたらしい。

 
ああ、なんとなくわかる。

 
以前も聞いたが、美愛ちゃんが花村家の中で最も信頼しているのは、葉子ちゃんだ。


彼女は、美愛ちゃんのちょっとした変化にすぐに気づき、誰よりも早く動いてくれる。だからこそ、あの2人を“叱れる”のも、葉子ちゃんだけなのかもしれない。

 



そうだ、思い出した。


以前、ジョセフさんとランチをしたときに聞いた話。なぜ、花村家の家族がそろって、美愛ちゃんを“過保護”なほどに大切にしているのか。その理由を……。

 
圭衣ちゃんが3歳の頃、久美子さんは第二子を妊娠した。けれど、残念ながら流産してしまい、以降は『もう妊娠は難しい』と医師に言われたのだという。

 
それから長い年月が経ち、奇跡のように、久美子さんの妊娠が判明した時、家族全員が泣いて喜んだそうだ。

 
けれど、妊娠中の久美子さんは重い悪阻に苦しみ、出産も大変で、一時は母子ともに命の危険があったという。

 
そして、そんな中で生まれてきたのが、美愛ちゃんだった。

 
妹を欲しがっていた圭衣ちゃんは、積極的に美愛ちゃんのお世話をし、やがて“超”がつくほどのシスコンになっていったらしい。

 
きっと、久美子さんも圭衣ちゃんも、そしてジョセフさんも、心からこの結婚を祝福してくれている。


けれどやっとの思いで、奇跡のように生まれてきた美愛ちゃんを“嫁に出す”ということは、やはり並大抵の寂しさではないのだろう。

 
“美愛は、私たち家族全員が望んで生まれてきた子”

 
以前、圭衣ちゃんがそう語っていた。

 
その言葉の重みが、ようやく今になって、心に深く響いてきた。

 
今日という日が、どれだけの想いに支えられているか。


それを、俺は──絶対に忘れない。