フレンチサテンのプリンセスラインに、浅めのVネック。レースの袖が施された、シンプルながらも品のあるドレス。

 
それは、まさに私が夢に描いていたもので……。圭衣ちゃんが、一針一針、心を込めて作ってくれた手作りのドレスだった。

 
髪は下ろして、白いオレンジの木の花とジャスミン、グリーンの葉で作られた花冠を乗せる。手には、トルコキキョウとスターチスでまとめられたブーケを。

 
さすがはプロのメイクさん。自分でお化粧するよりも、ずっとナチュラルで柔らかい仕上がりになっていた。

 
式の前、控え室でメイクさんが家族写真を撮ってくれた。


そのあと、式場へと移動する前に母さまと圭衣ちゃんから、ぎゅっとハグをしてもらった。

 
「綺麗だよ」


そう言ってくれたけれど、なぜかふたりとも目を合わせてくれなかった。


顔は笑っていても、言葉が少なくて。結局、感謝の気持ちをちゃんと伝えられないまま、時間が過ぎてしまった。

 
圭衣ちゃん、素敵なドレスを作ってくれて、本当にありがとう。


母さま、私のそばにいてくれてありがとう。


……、なのに、ちゃんと伝えられなくて、ごめんなさい。

 



テントへと移動すると、母さまと圭衣ちゃんは足早に中へ入っていった。


ようちゃんと最後に言葉を交わし、彼女も中へ。

 
残されたのは、私と父さまの2人だけ。


テントの入り口にはカーテンが掛けられていて、その前でしばらく待機することになった。

 
再び高まる緊張に、きっと気づいてくれたのだろう。父さまが、そっと声をかけてくれた。

 
「いよいよだね……、美愛。私と久美子のもとに生まれてきてくれて、ありがとう。愛してるよ。結婚しても、君は私たちの娘だ。
何かあったら、いつでも私たちを頼って、家に戻ってきなさい。今日の君は、一段と美しいよ」

 
父さまの目が、ほんの少し赤くなっているのがわかった。その姿を見たら、私も泣きそうになってしまう。

 

「父さま……、私、父さまと母さまの娘でよかった。圭衣ちゃんとようちゃんの妹でよかったです。今まで、本当にありがとうございました」

 
その瞬間、係の方がカーテンを開け、私たちはそっと、テントの中へと歩を進めた。