ホテルの部屋に戻ると、ルームサービスで少し遅めの夕食を楽しんだ。デザートには、季節外れの贅沢、メロンのショートケーキ。
ふわふわのスポンジと甘すぎない生クリームの間に、みずみずしい果肉が挟まれていて、口に入れた瞬間、思わず笑顔になってしまう。雅さんと2人でこうして穏やかに食事をするのは、どれくらいぶりだろう。
食事の途中、ふとカフェBon Bonのことが話題にのぼった。
「今日、思っていた以上に売り上げがあったみたいなんだよ」
「ほんとうに?」
雅さんの言葉に、私は思わずと聞き返す。
「特に、看板スイーツの3品が早々に完売してね。ベーカーたちは急きょ、カフェのキッチンだけじゃ足りなくて、近くの伊乃国屋コーポレーションのキッチンも借りて、明日の仕込みを進めてるよ」
すごい……。あのカフェが、いきなりそんなに人気になるなんて、まるで夢のようだ。
そのとき、ふと頭をよぎったのは……、チャームとTシャツのこと。
でも、言っていいのだろうか。私はあくまで秘書であって、Bon Bonの企画には直接関わっていない。いくら婚約者とはいえ、自分の立場を越えて口出しするのはどうなのだろう……?
「話してみて。美愛ちゃんが今、考えてることを教えて」
いきなり、雅さんがそう言ってきて私は一瞬、固まってしまった。やっぱりこの人には、何も隠せないんだな……。
「えっ? あ、あのね……、あのね、言っていいのか迷っていたの。今日、駅のホームで女性たちが話しているのが聞こえてきて……。でも、これは仕事のことだから、私が口を出すべきかどうか、ずっと迷ってて」
私が言い淀んでいるのに、雅さんは目を輝かせて、まるで子どものように身を乗り出してきた。
「もしかして、美愛ちゃん、また何かアイデアが浮かんだんじゃない? 全部教えて!」
その勢いに押されて、私は思い切って話し始めた。
「えーっと……、間に合うかどうか分からないけど、Bon Bonのロゴマークをチャームにできないかなって思って。チャームをネックレスやキーホルダーにして、お客様に選んでもらえるの。メッキタイプから18金まで価格帯も幅を持たせて、それをMuehのキャラメルとセットにして、3月のホワイトデー限定で販売するの」
雅さんはますます興味深そうに頷いている。
「セット販売は限定にして、でもチャームだけならネットで常時販売もできるかなって。
できれば、紫道さんとコラボできたら……、すごく素敵になると思う」
一息ついて、もうひとつ浮かんでいたアイデアを続けた。
「それから……、もうひとつは、Cool Beautyとのコラボで、Tシャツのポケットにワンポイントでロゴマークが刺繍されたデザイン。カジュアルなんだけど、品があって、大人も着られるような感じの……」
そこまで話して、私は自分の手のひらを見つめた。ほんの少し、指先が震えていた。
婚約者としてではなく、秘書としてでもなくひとりの“私”として、何かを提案することの勇気。
それを、雅さんがどう受け止めてくれるか、少しだけ不安だった。
ふわふわのスポンジと甘すぎない生クリームの間に、みずみずしい果肉が挟まれていて、口に入れた瞬間、思わず笑顔になってしまう。雅さんと2人でこうして穏やかに食事をするのは、どれくらいぶりだろう。
食事の途中、ふとカフェBon Bonのことが話題にのぼった。
「今日、思っていた以上に売り上げがあったみたいなんだよ」
「ほんとうに?」
雅さんの言葉に、私は思わずと聞き返す。
「特に、看板スイーツの3品が早々に完売してね。ベーカーたちは急きょ、カフェのキッチンだけじゃ足りなくて、近くの伊乃国屋コーポレーションのキッチンも借りて、明日の仕込みを進めてるよ」
すごい……。あのカフェが、いきなりそんなに人気になるなんて、まるで夢のようだ。
そのとき、ふと頭をよぎったのは……、チャームとTシャツのこと。
でも、言っていいのだろうか。私はあくまで秘書であって、Bon Bonの企画には直接関わっていない。いくら婚約者とはいえ、自分の立場を越えて口出しするのはどうなのだろう……?
「話してみて。美愛ちゃんが今、考えてることを教えて」
いきなり、雅さんがそう言ってきて私は一瞬、固まってしまった。やっぱりこの人には、何も隠せないんだな……。
「えっ? あ、あのね……、あのね、言っていいのか迷っていたの。今日、駅のホームで女性たちが話しているのが聞こえてきて……。でも、これは仕事のことだから、私が口を出すべきかどうか、ずっと迷ってて」
私が言い淀んでいるのに、雅さんは目を輝かせて、まるで子どものように身を乗り出してきた。
「もしかして、美愛ちゃん、また何かアイデアが浮かんだんじゃない? 全部教えて!」
その勢いに押されて、私は思い切って話し始めた。
「えーっと……、間に合うかどうか分からないけど、Bon Bonのロゴマークをチャームにできないかなって思って。チャームをネックレスやキーホルダーにして、お客様に選んでもらえるの。メッキタイプから18金まで価格帯も幅を持たせて、それをMuehのキャラメルとセットにして、3月のホワイトデー限定で販売するの」
雅さんはますます興味深そうに頷いている。
「セット販売は限定にして、でもチャームだけならネットで常時販売もできるかなって。
できれば、紫道さんとコラボできたら……、すごく素敵になると思う」
一息ついて、もうひとつ浮かんでいたアイデアを続けた。
「それから……、もうひとつは、Cool Beautyとのコラボで、Tシャツのポケットにワンポイントでロゴマークが刺繍されたデザイン。カジュアルなんだけど、品があって、大人も着られるような感じの……」
そこまで話して、私は自分の手のひらを見つめた。ほんの少し、指先が震えていた。
婚約者としてではなく、秘書としてでもなくひとりの“私”として、何かを提案することの勇気。
それを、雅さんがどう受け止めてくれるか、少しだけ不安だった。



