続お菓子の国の王子様〜結婚に向けて〜       花村三姉妹  美愛と雅の物語

ミッドタウンのサクラスクエアは、夜になってもなおバレンタインムード一色。


広場には「Happy Valentine」の文字が飾られ、『LOVE』のオブジェやカップル用のブランコ、大きなハートの装飾のまわりには、嬉しそうに写真を撮るカップルたちの笑顔があふれていた。

 
幸せな空気が、広がっている。

 



そのすぐそば、地下鉄入口前にあるカフェBon Bon。

 
午前中には長い行列ができていたけれど、今はすっかり落ち着いている。


看板には売り切れ商品の一覧が出ていて、
初日から大好評だったことが一目でわかる。

 
カウンター席には、テイクアウト用のカップを手にした人たちが座っていて、カフェ側のテーブル席は、カップルと女性グループが半々。こちらはまだ満席みたい。

 
あっ。

 
ふと目に留まったのは、駅のホームで見かけたロゴマークのポスター。その下には丁寧な説明文が添えられていて、正式な紹介が始まったことを知る。

 
昨日の午前中、私がここに立ち寄ったときには、まだ掲示されていなかった。

 
胸がじんわりと熱くなる。私が思い描いたイメージが、こうして“Bon Bon”の顔として形になり、皆に見てもらえるようになったなんて。

 
何より……、私の意図を、言葉にせずとも雅さんがすべて汲み取ってくれて、まるで一緒に創り上げたかのように、完成へと導いてくれた。

 
もし、あの出会いがなかったら。本社も、カフェBon Bonも、きっと存在しなかった。


そして何より……、私と雅さんが、こんなふうに出会うこともなかったんだ。

 
そんな想いにふけっていると、ふと、カウンター奥の壁に目が止まる。


メニュー表示のパネルの間に、額縁に入れられた、一枚のモノクロ写真。


そこには──まだ幼かった私が、雅さんの膝の上に座って抱きしめられている姿が写っていた。

 
思わず、息をのむ。

 
これ……、あの日の、公園での……。

 
急に泣き出した私を、優しく抱きしめてくれた雅さん。帰るのを嫌がって泣きわめいた私に、母さまが申し訳なさそうに頭を下げながら、『せめて一枚だけ』とお願いして撮った写真。

 
写真の中の私と雅さんは、お互いに見つめ合って、笑っていた。

 
本当に、彼は約束を守ってくれた。

 
『2人でお菓子屋さんをやろうね』って、
あの日、私に言ってくれた、あの約束。

 
今、こうしてその夢が、現実になっている。