「受付テーブルで葛野社長の家族が姫に危害を加えている」
短いメッセージを受け取った瞬間、胸の奥で何かが弾けた。大和はすぐに葛野社長を探しに向かい、京兄と悠士兄は『ここは任せろ』とでも言うように頷いた。俺は、全力で入口へと駆け出した。
……、守らなきゃ。絶対に、彼女を。
後から聞いた話だが、この時、京兄が高橋専務に“彼女の家族”の正体を教えていたらしい。たとえ彼女自身が花村という姓に遠慮を感じていたとしても、俺たち家族は違う。Hope Medical Japan、その後継者である3姉妹の末っ子、美愛。あのジョセフ花村の娘に手を出すとは、知らなかったでは済まされない。
スーパー伊乃国屋との契約話も白紙になったらしいな、フレッシュネス大竹。
さらに招待客の間でも、この一件が火をつけたようだった。ブラックリストに載っている一部の来賓たちは、噂が事実だと悟ったのか急に大人しくなった。
帰っていく高橋専務に、ブラックリスト常連の一人が皮肉めいた“ご忠告”を耳打ちしていたのは、まぁ、サービスってやつだ。
そして、受付。
品のない男が、美愛ちゃんの手首をテーブル越しに掴み、嫌がる彼女を無理に引き寄せようとしている。
すぐ傍にいた社員とガードの女性が男の手を引き離そうとしていたが、そいつは抵抗し、なおも手首を引っ張った。
……、ふざけるな。
怒りで頭が真っ白になるのを感じながら、やつの掴んだ親指を捻り上げてやる。
「この手を離してもらえますか? 彼女が痛がっている」
左手で美愛ちゃんの腰をしっかりと抱き寄せる。震えている。全身が細かく怯えているのがわかる。
くそっ……! 手首、真っ赤じゃないか。
「なんだテメー? 俺が先にこいつを見つけたんだよ! 引っ込んでろよ!」
……、先に見つけた?なんだそのクソみたいな理屈は。おまえなんか、俺の“姫”の足元にも及ばねぇくせに。
この時の俺は、表面上こそ冷静だったかもしれない。でも心の中では、この男を社会的に叩き潰すシナリオが、すでに出来上がっていた。
この場で殴らないだけ、理性で抑えてる。
だが、すべてが終わった後、おまえにこの言葉をくれてやるよ。
『地獄で会おうぜ』
真っ赤に腫れた彼女の手首に、そっと唇を落とす。これは怒りの誓いと、傷への“儀式”。
そこへ大和と葛野社長が駆けつけた。
「おい将太! 何をしているんだ、おまえは……! こんなにも酔っ払って……、西園寺社長に、何てことを!」
目の前の葛野社長は、先ほどの高橋専務と同じく、血の気の引いた顔で息子を見つめていた。
心の底から思う。
──あんたも、終わりだ。
だが、大和が俺を静かに制した。落ち着け、という合図に一度深く息を吐く。
冷静に見せておいて、その裏でじわじわと締め上げる。これが“西園寺のやり方”だ。
「葛野社長、本日はお祝いの席ですので、これ以上事を大きくするつもりはありません。ご子息を連れてお帰りください。……、婚約者に対する非礼については、後ほど弁護士の伊集院を通じて連絡差し上げます」
俺はもう、笑わない。
本気で怒った時、人は笑わないんだ。
短いメッセージを受け取った瞬間、胸の奥で何かが弾けた。大和はすぐに葛野社長を探しに向かい、京兄と悠士兄は『ここは任せろ』とでも言うように頷いた。俺は、全力で入口へと駆け出した。
……、守らなきゃ。絶対に、彼女を。
後から聞いた話だが、この時、京兄が高橋専務に“彼女の家族”の正体を教えていたらしい。たとえ彼女自身が花村という姓に遠慮を感じていたとしても、俺たち家族は違う。Hope Medical Japan、その後継者である3姉妹の末っ子、美愛。あのジョセフ花村の娘に手を出すとは、知らなかったでは済まされない。
スーパー伊乃国屋との契約話も白紙になったらしいな、フレッシュネス大竹。
さらに招待客の間でも、この一件が火をつけたようだった。ブラックリストに載っている一部の来賓たちは、噂が事実だと悟ったのか急に大人しくなった。
帰っていく高橋専務に、ブラックリスト常連の一人が皮肉めいた“ご忠告”を耳打ちしていたのは、まぁ、サービスってやつだ。
そして、受付。
品のない男が、美愛ちゃんの手首をテーブル越しに掴み、嫌がる彼女を無理に引き寄せようとしている。
すぐ傍にいた社員とガードの女性が男の手を引き離そうとしていたが、そいつは抵抗し、なおも手首を引っ張った。
……、ふざけるな。
怒りで頭が真っ白になるのを感じながら、やつの掴んだ親指を捻り上げてやる。
「この手を離してもらえますか? 彼女が痛がっている」
左手で美愛ちゃんの腰をしっかりと抱き寄せる。震えている。全身が細かく怯えているのがわかる。
くそっ……! 手首、真っ赤じゃないか。
「なんだテメー? 俺が先にこいつを見つけたんだよ! 引っ込んでろよ!」
……、先に見つけた?なんだそのクソみたいな理屈は。おまえなんか、俺の“姫”の足元にも及ばねぇくせに。
この時の俺は、表面上こそ冷静だったかもしれない。でも心の中では、この男を社会的に叩き潰すシナリオが、すでに出来上がっていた。
この場で殴らないだけ、理性で抑えてる。
だが、すべてが終わった後、おまえにこの言葉をくれてやるよ。
『地獄で会おうぜ』
真っ赤に腫れた彼女の手首に、そっと唇を落とす。これは怒りの誓いと、傷への“儀式”。
そこへ大和と葛野社長が駆けつけた。
「おい将太! 何をしているんだ、おまえは……! こんなにも酔っ払って……、西園寺社長に、何てことを!」
目の前の葛野社長は、先ほどの高橋専務と同じく、血の気の引いた顔で息子を見つめていた。
心の底から思う。
──あんたも、終わりだ。
だが、大和が俺を静かに制した。落ち着け、という合図に一度深く息を吐く。
冷静に見せておいて、その裏でじわじわと締め上げる。これが“西園寺のやり方”だ。
「葛野社長、本日はお祝いの席ですので、これ以上事を大きくするつもりはありません。ご子息を連れてお帰りください。……、婚約者に対する非礼については、後ほど弁護士の伊集院を通じて連絡差し上げます」
俺はもう、笑わない。
本気で怒った時、人は笑わないんだ。



