美愛ちゃんは受付の手伝いをするため、女性のボディーガードと一緒に会場の入り口へ向かっていった。
俺は大和や仲間たちと雑談を交わしていたが、そこに一人の女性がヌッと現れたかと思うと、突然声をかけてきた。
「西園寺社長、お子ちゃまのような子と婚約しちゃっていいんですかぁ? あんな子、不釣り合いですよぉ〜。私ならパパが『フレッシュネス大竹』の専務だし、お役に立てますよぉ〜?」
なんだこいつは。
いきなり目の前でこんな不躾なことを言ってくるこの女、一体誰だ?ブラックリストには載っていない。
するとすぐに、俺のインカムに情報が飛び込んできた。
『高橋樹里。“フレッシュネス大竹”の専務・高橋義雄の娘です。』
……、なるほど。確かに今日のパーティーには、高橋専務から今後の取引について直接挨拶したいという話があって招待状を出していた。ただし娘が同行するとは聞いていない。これまでのどのパーティーでも顔を見たことがなかったため、ブラックリストには記載されていなかった。
俺は眉ひとつ動かさず、冷ややかに言った。
「失礼ですが、お名前を伺ってもよろしいですか? また、弊社との関係についてお聞かせいただけますか?」
だが俺の態度などお構いなしに、その女は体をくねらせ、明らかに媚びた声でうれしそうに答えてきた。
「私は高樹里でーす。パパは『フレッシュネス大竹』の専務、高橋義雄でーす。あっ、パパ、こっちこっち〜!」
そう言いながら父親に向かってぶんぶんと手を振る。
俺たちの視線の鋭さに気づいたのか、高橋専務は顔をこわばらせながらこちらへ小走りで駆け寄ってきて、深く頭を下げた。
「さ、西園寺社長……、本日はお招きいただきありがとうございます」
俺は静かに、しかしはっきりと告げた。
「高橋専務、率直に申し上げます。非常に、不愉快です」
ぴくりと顔を上げた専務の視線を、真っ直ぐに捉える。
「あなたの娘さんが初対面の私に対して口にした、私の婚約者に対するあの戯言……、一企業の代表としてはもちろん、一人の人間としても許容できるものではありません」
青ざめた高橋専務が、娘に向かって声を荒げた。
「樹里! お前、一体何を言ったんだ⁉︎」
しかし娘は、きょとんとした顔で首をかしげ、まるで悪びれる様子もない。
「え? なに怒ってるの〜? 本当のことを言っただけじゃない。あんなお子ちゃまは社長には不釣り合いだって。それに、パパは専務なんだから、私と結婚したほうが社長のためになるって思っただけだよぉ〜」
満面の笑みを浮かべながら言い切るその様子に、俺の中の温度が一気に氷点下へ落ちるのがわかった。
……、見下されたな、西園寺家が。
「私の“ため”とは何でしょうか?」
そう言って、静かに続ける。
「西園寺家が、他の人脈を頼らなければ会社を動かせないと思われているのでしょうか?」
言葉の棘をそのまま包み込むように、微笑みを浮かべたまま畳みかける。
「それは随分と……、甘く見られたものです。私は、ただ彼女だから結婚するんです。家柄なんて、関係ない」
心の底から絞り出すように、最後の一撃を放つ。
「彼女は、私と出会ってから、たくさんの幸運を運んできてくれました。私が愛してやまないのは、彼女だけです。ちなみに……、仮に“家柄”が関わるとしても、あなたの娘さんは彼女に勝てませんよ」
高橋専務の顔色は土気色になり、まるでその場から消えてしまいたいような表情をしていた。
俺はさらに一歩踏み込んだ。
「高橋専務、本当に残念です。今日のことについては後日、正式にご連絡させていただきます。ですが、今はお引き取り願います」
その瞬間、俺たちのインカムに、別の“気がかりな情報”が入ってきた──
俺は大和や仲間たちと雑談を交わしていたが、そこに一人の女性がヌッと現れたかと思うと、突然声をかけてきた。
「西園寺社長、お子ちゃまのような子と婚約しちゃっていいんですかぁ? あんな子、不釣り合いですよぉ〜。私ならパパが『フレッシュネス大竹』の専務だし、お役に立てますよぉ〜?」
なんだこいつは。
いきなり目の前でこんな不躾なことを言ってくるこの女、一体誰だ?ブラックリストには載っていない。
するとすぐに、俺のインカムに情報が飛び込んできた。
『高橋樹里。“フレッシュネス大竹”の専務・高橋義雄の娘です。』
……、なるほど。確かに今日のパーティーには、高橋専務から今後の取引について直接挨拶したいという話があって招待状を出していた。ただし娘が同行するとは聞いていない。これまでのどのパーティーでも顔を見たことがなかったため、ブラックリストには記載されていなかった。
俺は眉ひとつ動かさず、冷ややかに言った。
「失礼ですが、お名前を伺ってもよろしいですか? また、弊社との関係についてお聞かせいただけますか?」
だが俺の態度などお構いなしに、その女は体をくねらせ、明らかに媚びた声でうれしそうに答えてきた。
「私は高樹里でーす。パパは『フレッシュネス大竹』の専務、高橋義雄でーす。あっ、パパ、こっちこっち〜!」
そう言いながら父親に向かってぶんぶんと手を振る。
俺たちの視線の鋭さに気づいたのか、高橋専務は顔をこわばらせながらこちらへ小走りで駆け寄ってきて、深く頭を下げた。
「さ、西園寺社長……、本日はお招きいただきありがとうございます」
俺は静かに、しかしはっきりと告げた。
「高橋専務、率直に申し上げます。非常に、不愉快です」
ぴくりと顔を上げた専務の視線を、真っ直ぐに捉える。
「あなたの娘さんが初対面の私に対して口にした、私の婚約者に対するあの戯言……、一企業の代表としてはもちろん、一人の人間としても許容できるものではありません」
青ざめた高橋専務が、娘に向かって声を荒げた。
「樹里! お前、一体何を言ったんだ⁉︎」
しかし娘は、きょとんとした顔で首をかしげ、まるで悪びれる様子もない。
「え? なに怒ってるの〜? 本当のことを言っただけじゃない。あんなお子ちゃまは社長には不釣り合いだって。それに、パパは専務なんだから、私と結婚したほうが社長のためになるって思っただけだよぉ〜」
満面の笑みを浮かべながら言い切るその様子に、俺の中の温度が一気に氷点下へ落ちるのがわかった。
……、見下されたな、西園寺家が。
「私の“ため”とは何でしょうか?」
そう言って、静かに続ける。
「西園寺家が、他の人脈を頼らなければ会社を動かせないと思われているのでしょうか?」
言葉の棘をそのまま包み込むように、微笑みを浮かべたまま畳みかける。
「それは随分と……、甘く見られたものです。私は、ただ彼女だから結婚するんです。家柄なんて、関係ない」
心の底から絞り出すように、最後の一撃を放つ。
「彼女は、私と出会ってから、たくさんの幸運を運んできてくれました。私が愛してやまないのは、彼女だけです。ちなみに……、仮に“家柄”が関わるとしても、あなたの娘さんは彼女に勝てませんよ」
高橋専務の顔色は土気色になり、まるでその場から消えてしまいたいような表情をしていた。
俺はさらに一歩踏み込んだ。
「高橋専務、本当に残念です。今日のことについては後日、正式にご連絡させていただきます。ですが、今はお引き取り願います」
その瞬間、俺たちのインカムに、別の“気がかりな情報”が入ってきた──



