続お菓子の国の王子様〜結婚に向けて〜       花村三姉妹  美愛と雅の物語

翌朝、出社して社員を集め、いよいよ発表を行った。

 
まず最初に、2月にオープン予定の『カフェBon Bon』のユニフォームについて話す。
Cool Beautyに依頼していて、圭衣ちゃんのデザイン画を紹介すると、女性社員を中心にすごく評判が良かった。ほっとした。

 
続けて、会社とカフェの新しいロゴマークも発表。これも女性たちから好反応で、正直かなり安心した。

 
ネット販売やハーブティーセットの取り扱い開始に伴って、情報システム部への社内異動希望者の募集も伝える。

 
そして最後に、プライベートな話を切り出す。

 
社員たちをゆっくり見渡しながら、“ファンクラブ”の女性社員たちの位置を確認していく。
大和、美奈子さん、石田さん(通称:総務のおばちゃん)、部長たちの5人が、美愛ちゃんの近くにいてくれている。

 
「最後に、仕事じゃなくて俺のプライベートな話をさせてほしい。このたび、婚約して、来月3月に入籍する予定だ。彼女とは、少し前から一緒に暮らしている。先週末に、ようやく両家の顔合わせが済んだ」

 
そこまで言ったところで、社員の間からざわめきが起きた。すると、1人の女子社員、ファンクラブのメンバーの1人が手を挙げた。

 
「婚約者はどちらの方ですか?」

 
……、やっぱり聞かれるか。本来ここまで言う必要はないけど、誤解や詮索を防ぐためにも少し話すことにする。

 
「いろいろ聞きたいこともあると思うけど、まずは少しだけ俺の話を聞いてくれ。さっき発表したロゴマークには、昔の俺と彼女、そして彼女が大事にしている“プードルのぬいぐるみ”がモチーフになっている。彼女がいたから、今の俺があって、この会社があるんだ。
高校1年のとき、進路に迷っていた俺がその女の子に出会って、会社を作る決意をした。
そのことだけは、みんなにも知っておいてほしかった」

 
まだ名前は出していない。けど、彼女こそが『Bon Bon』の原点であることを伝えたかった。“釘を刺す”意味でも。

 

静まり返った社内を確認しながら、マイクを隣の大和に渡す。そのまま、後方に立っている美奈子さんと美愛ちゃんのもとへ、ゆっくりと歩いていく。

 
みんなの視線を感じて、美愛ちゃんは今にも泣きそうな顔でうつむいていた。

 
怖がらなくていい。
俺も、信頼できる仲間たちも、君を守る。

 
彼女の前で立ち止まり、右手を差し出す。
美愛ちゃんが、戸惑いながらも顔を上げたのを見て、俺は彼女の手を取った。左腕で彼女の腰をしっかりと抱き寄せ、小さく震える彼女を守るようにして、前へと進んでいく。

 
美愛ちゃん、君は俺の隣で、堂々としていればいいんだ。