さっきまでのざわつきが嘘のように静まり返り、雅さんはゆっくりと社員たちの視線を背に受けながら、会場の後方、私のいる方へと歩いてきた。
みんなの注目は彼に集まり、その視線の先にいる私へも自然と向けられていく。
怖さといたたまれなさで、私はじっと俯いたまま動けなかった。そんな私の足元に、磨かれた革靴の先と、差し出された右手が映り込む。
そっと顔を上げると、そこにはいつもの優しい笑みを浮かべた雅さんがいた。彼は私の右手を静かに取ると、もう片方の手で私の背中を軽く支え、そっと前へと導いてくれる。
一緒に前へ歩み出すと、彼はもう一度マイクを手に取り、みんなに向かって語りかけた。
「出会った時の彼女の言葉が、この会社を立ち上げる目標となり、俺自身が救われた。俺が一生、愛し、守ると誓った女性──それが、婚約者の花村美愛さんです」
その瞬間、会場に温かな拍手が広がる。みんなの笑顔が目に映り、私は感極まって涙をこぼしていた。
「美愛ちゃん、おめでとう!」
「社長、やっとですか?」
「遅いですよ、社長!」
えっ? みんな、どうして知ってたの……?
どういうこと?
困惑している私に、総務部長の杉山さんが穏やかに声をかけてくれた。
「みんな知ってたんだよ、花村さん。社長はいつも君のことを目で追ってたし、他の男が話しかけると、すごい目で睨んでたしね。それに……、君が来てから、社長が穏やかになったんだよ」
周囲の社員たちも、笑いながら頷いていた。
雅さんは最後に、静かに語りかけるように締めくくった。
「もう気づいていると思うけど……、以前、佐藤麻茉が社内メールで送った写真は、俺と彼女だ。それと、Cool Beautyの社長と副社長は彼女の姉さんたち。だから、あのメールは誤解だったってことを知っておいてほしい。それからお願いがある。俺たちの婚約と結婚については、カフェBon Bonのパーティーで正式に発表する予定だから、それまでは口外しないでくれ。美愛ちゃんの安全を考えてのことなんだ。みんな、頼むよ」
みんなの注目は彼に集まり、その視線の先にいる私へも自然と向けられていく。
怖さといたたまれなさで、私はじっと俯いたまま動けなかった。そんな私の足元に、磨かれた革靴の先と、差し出された右手が映り込む。
そっと顔を上げると、そこにはいつもの優しい笑みを浮かべた雅さんがいた。彼は私の右手を静かに取ると、もう片方の手で私の背中を軽く支え、そっと前へと導いてくれる。
一緒に前へ歩み出すと、彼はもう一度マイクを手に取り、みんなに向かって語りかけた。
「出会った時の彼女の言葉が、この会社を立ち上げる目標となり、俺自身が救われた。俺が一生、愛し、守ると誓った女性──それが、婚約者の花村美愛さんです」
その瞬間、会場に温かな拍手が広がる。みんなの笑顔が目に映り、私は感極まって涙をこぼしていた。
「美愛ちゃん、おめでとう!」
「社長、やっとですか?」
「遅いですよ、社長!」
えっ? みんな、どうして知ってたの……?
どういうこと?
困惑している私に、総務部長の杉山さんが穏やかに声をかけてくれた。
「みんな知ってたんだよ、花村さん。社長はいつも君のことを目で追ってたし、他の男が話しかけると、すごい目で睨んでたしね。それに……、君が来てから、社長が穏やかになったんだよ」
周囲の社員たちも、笑いながら頷いていた。
雅さんは最後に、静かに語りかけるように締めくくった。
「もう気づいていると思うけど……、以前、佐藤麻茉が社内メールで送った写真は、俺と彼女だ。それと、Cool Beautyの社長と副社長は彼女の姉さんたち。だから、あのメールは誤解だったってことを知っておいてほしい。それからお願いがある。俺たちの婚約と結婚については、カフェBon Bonのパーティーで正式に発表する予定だから、それまでは口外しないでくれ。美愛ちゃんの安全を考えてのことなんだ。みんな、頼むよ」



