翌日、私と雅さんは温泉のお土産として買った温泉饅頭を持って、彼の車で出社した。お饅頭は、発表が終わったあとにみんなに配る予定だ。
株式会社Bon Bonのオフィスは、壁の少ないオープンスタイル。社長室、副社長室、秘書室、会議室、情報部の5か所だけが、個別に仕切られている。
全社員がフロアに集まり、大和副社長がマイクを手に、挨拶を始めた。
「社長から発表があります」
まず最初に伝えられたのは、カフェBon Bonの記念パーティー開催について。それから、カフェの従業員制服をCool Beauty社に依頼したという話。
──えっ!?
圭衣ちゃんの会社と、いつの間に契約していたの……?
次に発表されたのは、在庫ハーブティーの活用とネット販売の展開。加えて、新しく決まった会社のロゴマークについても紹介された。
女性社員たちから「『かわいい〜!』という声があがり、どうやら評判は上々のようだった。
そして、ついに最後の発表が訪れてしまった。
実は、出社直後──大和副社長と、秘書の美奈子さんが社長室に呼ばれ、私たちの婚約について知らされた。
大和副社長はもちろん知っていたけれど、美奈子さんが「ようやくですか?」と笑って言ったのを聞いて、私は思わず驚いてしまった。
雅さんが社員たちを見回し、マイクを手に話し始める。
「最後に、少し私のプライベートなことを話させてほしい──」
その言葉に、フロアの空気が一瞬、変わる。
「このたび、婚約しまして来月、3月に入籍する予定です。彼女とは少し前から一緒に暮らしています。先週末、ようやく両家の顔合わせが済みました」
その瞬間、女性社員たちから、悲鳴のような声があがった。
……、やっぱり、こうなるよね。
婚約者が私だと知られたら、どんなふうに思われるんだろう?
私は右手を左手に重ね、指輪が見えないようにそっと隠した。すぐ隣にいる美奈子さんが、誰にも気づかれないようにそっと背中をさすってくれる。
「婚約者は……、どちらの方ですか?」
誰かがそう尋ねた瞬間、フロアがざわめき始めた。
お願い……、誰も見ないで。今すぐここから逃げ出したい……。
私が不安に駆られている間に、前方に立つ雅さんの声が、静かに会場に響き始めた。
「いろいろ質問があるとは思うけれど、まずは俺の話を少し聞いてほしい」
一呼吸置いてから、彼は続けた。
「先ほど紹介した会社のロゴマークは、昔の俺と彼女──そして、彼女が持っているぬいぐるみのプードルをモチーフにしたものです。このロゴには、彼女との思い出と、彼女への感謝の気持ちを込めています」
社員たちの間に、静けさが戻る。
「高校1年のとき、進路に迷っていた俺は、彼女と出会った。その出会いがきっかけで、Bon Bonを作ろうと決意したんです。だからこの会社があるのは、彼女のおかげなんです」
その真っ直ぐな言葉に、胸が熱くなった。
株式会社Bon Bonのオフィスは、壁の少ないオープンスタイル。社長室、副社長室、秘書室、会議室、情報部の5か所だけが、個別に仕切られている。
全社員がフロアに集まり、大和副社長がマイクを手に、挨拶を始めた。
「社長から発表があります」
まず最初に伝えられたのは、カフェBon Bonの記念パーティー開催について。それから、カフェの従業員制服をCool Beauty社に依頼したという話。
──えっ!?
圭衣ちゃんの会社と、いつの間に契約していたの……?
次に発表されたのは、在庫ハーブティーの活用とネット販売の展開。加えて、新しく決まった会社のロゴマークについても紹介された。
女性社員たちから「『かわいい〜!』という声があがり、どうやら評判は上々のようだった。
そして、ついに最後の発表が訪れてしまった。
実は、出社直後──大和副社長と、秘書の美奈子さんが社長室に呼ばれ、私たちの婚約について知らされた。
大和副社長はもちろん知っていたけれど、美奈子さんが「ようやくですか?」と笑って言ったのを聞いて、私は思わず驚いてしまった。
雅さんが社員たちを見回し、マイクを手に話し始める。
「最後に、少し私のプライベートなことを話させてほしい──」
その言葉に、フロアの空気が一瞬、変わる。
「このたび、婚約しまして来月、3月に入籍する予定です。彼女とは少し前から一緒に暮らしています。先週末、ようやく両家の顔合わせが済みました」
その瞬間、女性社員たちから、悲鳴のような声があがった。
……、やっぱり、こうなるよね。
婚約者が私だと知られたら、どんなふうに思われるんだろう?
私は右手を左手に重ね、指輪が見えないようにそっと隠した。すぐ隣にいる美奈子さんが、誰にも気づかれないようにそっと背中をさすってくれる。
「婚約者は……、どちらの方ですか?」
誰かがそう尋ねた瞬間、フロアがざわめき始めた。
お願い……、誰も見ないで。今すぐここから逃げ出したい……。
私が不安に駆られている間に、前方に立つ雅さんの声が、静かに会場に響き始めた。
「いろいろ質問があるとは思うけれど、まずは俺の話を少し聞いてほしい」
一呼吸置いてから、彼は続けた。
「先ほど紹介した会社のロゴマークは、昔の俺と彼女──そして、彼女が持っているぬいぐるみのプードルをモチーフにしたものです。このロゴには、彼女との思い出と、彼女への感謝の気持ちを込めています」
社員たちの間に、静けさが戻る。
「高校1年のとき、進路に迷っていた俺は、彼女と出会った。その出会いがきっかけで、Bon Bonを作ろうと決意したんです。だからこの会社があるのは、彼女のおかげなんです」
その真っ直ぐな言葉に、胸が熱くなった。



