マンションから車で10分の閑静な住宅街に、私の実家と母さまのクリニックを合わせた広さの家。周囲を高い壁に囲まれているため、外から中の様子はわからないが、壁よりも高い木々が見える。門にはセキュリティーカメラも設置されており、一層の緊張感をもたらした。車を車庫に入れると、玄関までの距離がやけに長く感じる。


なんだかすごい場所に来てしまったな。
さすが旧華族の家柄。
こんな私を受け入れてもらえるのだろうか?
もし受け入れてもらえなかったら、雅さんは結婚を諦めてしまうのかな?
どうしよう、怖い......。


玄関の前で雅さんが立ち止まり、抱きしめられた。


「話してみて、何が美愛ちゃんを不安にさせているのか教えてくれる?」


以前の私なら『なんでもない』と言っていたが、嘘や隠し事はしないと2人で約束したから。数回深呼吸してから、雅さんを見つめた。


「あ、あのね、すごく怖いの。もし受け入れてもらえなかったら、雅さんはどうするのかって。怖いの」

「絶対大丈夫だよ。でも、もしそうなったら、俺が婿養子になって花村の姓を名乗り、美愛ちゃんと結婚するよ。西園寺の名前よりも、君と一緒にいたいんだ、俺は。美愛ちゃんは? 俺が西園寺でなくなっても、結婚してくれるの?」

「も、もちろん、決まっているでしょう! 私が非常識いよりに言った言葉は、私の本心だよ。私もずっと一緒にいたいから」

「俺たちの気持ちは同じだね。じゃあ、何が起きても大丈夫だよ。さあ、行こう」